世界初の海上空港として誕生した長崎空港(長崎県大村市)が、5月1日で開港40周年を迎える。これを記念し、同空港を運営する長崎空港ビルディング株式会社が、世界遺産候補の「長崎の教会群」(国宝・重要文化財)の維持保全に対して支援することを14日、文書を通して報道機関に発表した。
同社によると、同空港の年間乗客数を1円に換算した額を県内の教会群の維持保全費としてカトリック長崎大司教区に寄付する。このような形での寄付を行うことにしたのは、「利用客と一体となった活動にするため」と言い、向こう10年間(2015~24年)で総額3000万円程度の寄付を目標としている。
県内の教会群など14資産で構成される「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産登録推薦書は今年1月、ユネスコに提出された。長崎県では、その中核となる教会群のほとんどが過疎地域に所在しているため、県民挙げての長期的かつ地道な支援が必要だと考えている。このため同社でも、「長崎空港を利用する乗客と共に『長崎の教会群』の長期的な維持保全の支援をしていこうと決めた」としている。
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」とは、16世紀以来の日本におけるキリスト教の受容過程を示す遺産群を言う。構成資産の大半は、離島や過疎地にあり、地元信者の減少も著しい。文化財は、調査や工事に膨大な費用がかかるため、所有者の負担は大きく、維持管理の面に大きな不安を常に抱えている状態にある。
読売新聞が長崎県世界遺産登録推進課の話として伝えたところによると、07年から12年にかけて、教会群の一つである「出津教会堂と関連施設」に含まれる旧出津救助院(長崎市)の補修工事が行われた。その費用は約7億3000万円で、国と県の補助があったとはいえ、所有者が負担した額は約1億6000万円だという。
同社では、40年間空港を支えてくれた感謝を述べるとともに、「県民共通の宝である世界遺産候補『長崎の教会群』の維持保全事業に対し支援していきたい」と文書の中で述べている。
文化庁の発表によると、今後、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は今年9月ごろ、ユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)の調査を予定している。調査を終えた後、16年4月~5月に「登録」や「不登録」などの判断をユネスコに勧告し、同年6月にユネスコの第40回世界遺産委員において登録の可否が審議されることになっている。