「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」に含まれる長崎県・野崎島にある旧野首(のくび)教会で3月29日、クラシックコンサートが行われた。産経ニュースが伝えた。
今回行われたコンサートは、2001年から続いている同県小値賀(おぢか)町の「長崎おぢか国際音楽祭」の催しの一つ。現在、無人島となっている野崎島も開催地の一つとして、不定期でコンサートが行われている。今回で14回目を数えるこの音楽祭には、ピアニストの青柳晋さん(東京芸術大学准教授)やチェロ奏者の長谷川陽子さんらが出演。フリッツ・クライスラー作曲の「愛の喜び」など5曲を演奏した。
「感性・感動・調和」をコンセプトに、音楽教育、文化振興、国際交流、環境教育、交流人口増加などを目的に行われている同音楽祭。外務省や文化庁をはじめ、朝日新聞社や毎日新聞社など多数の後援のもと、コンサート以外にも老人ホームや寝たきり老人の家に訪問し演奏する「アウトリーチ音楽宅配便」や講習会、セミナーなど多くの活動を行っている。
旧野首教会は、野崎島の小高い丘の上に位置するカトリックの聖堂。現在、教会としては使用されていないが、1989年に長崎県指定有形文化財に指定されている。1800年前後にこの島に移住した隠れキリシタンの2家族7人がこの教会のルーツといわれている。
明治維新後も、政府は幕府からキリスト教の禁教令を受け継いたため迫害は続いたが、禁教令は1873年に廃止。当時、平戸監獄服役中だった野崎島の隠れキリシタンたちは、晴れて信仰の自由が認められて野崎島へ戻った。その後、建設費を捻出するために共同生活を始め、地道に資金を蓄え、1908年に本格的なレンガ造りの野首教会を完成させた。
島民は最盛期には約800人に達したが、1971年にカトリック信徒6世帯31人が島を退去。2001年以降は島自体が無人島となるも聖堂は修復、保存されることとなった。
現在、同教会は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産の一つとして、世界遺産登録の候補となっている。その他の構成資産には、大浦天主堂(長崎市)や島原・天草の乱の主戦場となった原城跡(南島原市)などが含まれるが、その中でも野崎島に渡る船が小値賀島からしか出ていなかったり、事前に上陸の連絡が必要だったりするなど、構成資産の中で最も行くのが難しい場所といわれている。しかし、もともと小学校だった建屋を改装した宿泊施設もあり、キャンプなどに利用することも可能だ。
問い合わせは、同楽祭(電話:080・6438・7273、FAX:0959・56・3530)または、おぢかアイランドツーリズム (電話:0959・56・2646、ホームページ)まで。