わたしの恵みは、あなたに十分である(その2)
イギリスの清教徒の一人だったジョン・バ二ヤン(John Bunyan)の『天路歴程』はあまりにも有名で、ほとんどの方が読んでみられたか、聞かれたことがあるだろうと思います。ジョン・バニヤンは非国教会派と国教会派との間の葛藤が深まっていた1660年代に、許可証なく公然と説教していた中、逮捕されました。その後、彼は12年もの長きにわたって牢獄に閉じ込められてしまいました。牢獄での生活は大変つらいものでした。それに加え、彼は牢獄で過ごすうちに愛する妻メアリーを失い、彼の3人の子どもは一瞬にして孤児のようになってしまいました。何て悲惨な状況でしょう。ジョン・バニヤンは苦しみの中で神様に泣き叫んで祈りました。その時、神様は彼に3度も同じ御声を聞かせてくださいました。
「あなたはものを書きなさい。わたしはあなたにものを書くタラントを与えたのだ」。ジョン・バニヤンはこの御声とともに、主の御国に向かって歩いていく一人の人の幻を見て、文を書き始めました。すると、うんざりだった牢獄生活も天国のように思えてきました。彼は毎日神様の御言葉を黙想するうち、神様との深い霊的交わりを持つことができました。このような中から生まれた『天路歴程』は、彼が説教をしながら福音を伝えていたときよりも、もっと多くの人々を神様へと導きました。
このように、私たちが痛みと苦しみによって弱くなったとき、神様の恵みによって、かえって大きな力を発揮することができます。
私たちの齢は七十年。健やかであっても八十年。しかも、その誇りとするところは労苦とわざわいです。それは早く過ぎ去り、私たちも飛び去るのです。(詩篇90:10)
私たちの人生に試練と艱難(かんなん)、貧しさと失敗はつきものです。しかし、私たちの人生に働かれるイエス・キリストに頼って信仰で進むとき、私たちは勝利できます。環境を克服して勝利する信仰生活を通して、成熟した信仰を所有する力あるキリスト者になることができます。私たちはイエス様お一人だけで満足できる成熟した信仰の場所へと進み行き、多くの人々を光へと導かなければなりません。預言者ハバククが苦しみの中で主にささげた感謝を忘れてはなりません。
そのとき、いちじくの木は花を咲かせず、ぶどうの木は実をみのらせず、オリーブの木も実りがなく、畑は食物を出さない。羊は囲いから絶え、牛は牛舎にいなくなる。しかし、私は主にあって喜び勇み、私の救いの神にあって喜ぼう。(ハバクク3:17、18)
世界的なファーストフード・チェーンであるKFC(Kentucky Fried Chicken)の創業者カーネル・サンダース(Colonel Sanders)は6歳の時に父親を亡くし、父親の代わりに生計を立てていた母親と2人の幼い弟と一緒に暮らしました。サンダースは10歳という若さで農場で働かなくてはならず、12歳の時は母親が再婚したために故郷を離れ、とにかく手当たり次第に仕事をしなければなりませんでした。
大人になってからは安定的な生活を送っていた彼は、65歳で引退して社会保障金として毎月105ドルの給付を受けながら暮らしていました。そんなある日、彼は持っていたお金を全部つぎ込んで買った圧力釜を自分の古ぼけたトラックに積み込んで旅立ちました。それまでレストランを経営しながらこつこつと開発してきたオリジナルのチキン調理法を売り込んでみたかったのです。
サンダースは食堂のオーナーたちを訪ねて行っては、チキン調理法を教える代わりに、チキンが1羽売れるたびに調理法の使用料を自分に渡すという条件を提示しました。しかし、身なりのみすぼらしい老人に使用料を支払いながら調理法を買い取ってくれる食堂のオーナーはいませんでした。
サンダースは数えきれないほどの食堂から断られました。彼が断られた回数は千回以上だったそうです。しかし、サンダースは諦めませんでした。彼はトラックで寝泊りし、ガソリンスタンドのトイレで髭を剃りながら、自分の大事な夢を実現するためにアメリカ全土を回りました。
そしてついに1009番目の食堂が彼の提示した条件を受け入れました。もし彼が千回目で諦めて家に帰ったなら、今のKFCは存在しなかったことでしょう。ついに彼の苦労が実り、契約を結ぶ食堂がどんどんと増え、全世界100カ国あまり、3万カ所以上の店舗展開という巨大な花を咲かせることになったのです。
このように、苦しみは人生を新しい世界へと導きます。また、私たちの弱さは、苦難を克服するための原動力になったりします。ですから、弱さもまた力だといえるのです。弱さは創造的エネルギーを造り出す力です。ですから私たちにあるとげは、主が私たちに下さる喜びの通路であり、力の通路なのです。
詩篇119編71節を見ると、「苦しみに会ったことは、私にとってしあわせでした。私はそれであなたのおきてを学びました」とあります。私たちは大変弱いですが、私たちの主の力は強く、偉大です。ですから、私たちの肉体にとげがあるとき、落胆するのではなく、かえって私たちを恵みの座へと導くための愛のとげだということを知り、感謝しなくてはなりません。神様を恨むのではなく、神様の力に頼らなければなりません。そうする時に、使徒パウロのように「とげにさえも神様の恵みが込められている」と告白できるようになるのです。
(イ・ヨンフン著『まことの喜び』より)
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【書籍紹介】
李永勲(イ・ヨンフン)著『まことの喜び』 2015年5月23日発行 定価1500円+税
苦難の中でも喜べ 思い煩いはこの世に属することである
イエス様は十字架を背負っていくその瞬間も喜んでおられました。肉が裂ける苦しみと死を前にしても、淡々とそれを受け入れ、後悔されませんでした。私たちをあまりにも愛しておられたからです。喜びの霊性とは、そんなイエス様に従っていくことです。イエス様だけで喜び、イエス様だけで満足することを知る霊性です。神様はイエス様のことを指し、神の御旨に従う息子という意味を込めて「これは、わたしの愛する子」(マタイ3:17)と呼びました。すなわち、ただ主お一人だけで喜ぶ人生の姿勢こそが、神の民がこの世で勝利できる秘訣だということです。
(イ・ヨンフン著『まことの喜び』プロローグより)
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李永勲(イ・ヨンフン)
4代続くキリスト教家庭に生まれ、幼い頃から主日学校に通いながらヨイド純福音教会と深い関わりを持ってきた。延世大学および韓世大学、連合神学大学院を卒業し、アメリカのウェストミンスター神学大学院修士課程を修了した後、アメリカのテンプル大学において宗教哲学修士(M.A.)と宗教哲学博士学位(Ph.D)を取得した。アメリカのワシントン純福音第一教会、日本のフルゴスペル東京教会、アメリカのLAナソン純福音教会の担任を務め、国際神学研究院院長、韓世大学教授、アメリカのベテスダ大学総長、ヨイド純福音教会教務担当副牧師などを歴任し、対外的には韓国キリスト教総連合会(CCK)共同会長と韓国キリスト教教会協議会(NCCK)会長などを歴任した。
現在、ヨイド純福音教会の2代目担任牧師として、韓国キリスト教総連合会(CCK)代表会長、キリスト教大韓アッセンブリーズ・オブ・ゴッド総会長、社団法人グッド・ピープル理事長などの活動を行っている。チョー・ヨンギ牧師の牧会と霊性を継承、発展させながら、ペンテコステ聖霊運動と御言葉充満の調和、仕えることと分かち合うことの実践、世界宣教および教会連合運動などに力を注いでいる。
主な著書としては『The Holy Spirit Movement in Korea』『霊的成長の道』『小さきイエスの霊性1・2』『感謝の奇蹟』『信仰の奇蹟』(以上、全て韓国語版)、韓英対訳『十字架の恵み』など多数。訳書としては『ペンサコーラ、奇蹟の現場‐ブラウンズビル教会』『世界ペンテコステ・ホーリネス運動の歴史』などがある。