神はなぜユダヤ人(イスラエル民族)を選んだのか。
ユダヤ人の先祖をさかのぼれば、アブラハムという徹底して神信仰に生きた人がいました。
神は彼の信仰を良しと認めて、子孫を増やし、一つの民族とし、これを祝福しようと約束しました。彼の子イサクにも、彼の孫ヤコブにも同様の祝福を約束しました。基本的にはこの約束のゆえに、アブラハム、イサク、ヤコブの子孫たるユダヤ人を神の民とされたのです。これは、この民に神の言葉、聖書を担わせよう、この民を、神の救いの計画を広げていくためのモデル民族にしよう、との意図があったものと思われます。
このためユダヤ人には、記憶の民、書物の民としての豊かな天分(賜物)が与えられ、それが近代になって科学的なもの、頭脳的なもの、芸術的なものについての優れた資質となって発揮されています。
神に選ばれたということは、一面で、大変名誉なことでありますが、他面で、大きな責任を伴う、荷の重い立場でもありました。代々のユダヤ人は、この荷の重さに耐えかね、頑迷で、不従順となり、失敗を繰り返し、大勢として不信仰の罪に陥ったのです。このため、有名なアッシリヤ捕囚(BC722年)、バビロン捕囚(BC586年)で滅ぼされ、紀元前後には救い主イエス・キリストを十字架にかけて殺し、呪いを受ける存在になりました。その結果、二度のユダヤ戦争によって大離散の憂き目に遭い、国土を失い、流浪の民として世界中に散らされ、事あるごとに迫害を受けるなど、苦難の歩みとなりました。
しかし、それかといって、完全に滅び去ってしまうことはなく、少数がいつも“切り株”として残されてきました。最終的には「ヤコブ(ユダヤ人)から不敬虔を取り払う」と預言されており、「神の賜物と召命とは変わることがありません」と聖書も保証しているところです(ローマ11:29)。
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正木弥(まさき・や)
1943年生まれ。香川県高松市出身。京都大学卒。17歳で信仰、40歳で召命を受け、48歳で公務員を辞め、単立恵みの森キリスト教会牧師となる。現在、アイオーンキリスト教会を開拓中。著書に『ザグロスの高原を行く』『創造論と進化論 〜覚え書〜 古い地球説から』『仏教に魂を託せるか』『ものみの塔の新世界訳聖書は改ざん聖書』(ビブリア書房)など。
【正木弥著書】
『なにゆえキリストの道なのか 〜ぶしつけな240の質問に答える〜 増補版』
『仏教に魂を託せるか 〜その全体像から見た問題点〜 改訂版』
『ザグロスの高原を行く イザヤによるクル王の遺産』(イーグレープ)