ハワイの日本人・日系人社会を支え、「サムライ牧師」と呼ばれた奥村多喜衛の生誕150年、そして同志社大学とハワイの交流80年を記念する企画展「ハワイに高知城をたてた男 奥村多喜衛-同志社・ハワイ交流前史」が8日から、同志社大学今出川キャンパス内にあるハリス理化学館同志社ギャラリー(京都市上京区)で開催されている。2月10日まで。
同志社大学にある日米親善と日系アメリカ人の日本文化理解を目的とした同志社布哇(はわい)寮は、2016年に完成80周年を迎える。同大学とハワイの関係は戦前にまでさかのぼる長い歴史があるが、実はそれ以前に、ハワイの日本人・日系人社会の構築に多大な貢献をした同志社神学校卒業生がいる。
それが、高知県出身の牧師、奥村多喜衛(1865~1951)だ。海外伝道を希望していた奥村は、同大学を卒業後ハワイに向かい、そこで日本人移民の現状を目の当たりにした。外国社会で劣悪な環境に苦しむ人々、農業従事者の過酷な労働環境、野放しにされている子どもたち。奥村は、幼稚園、小学校、寄宿舎を設立したり、日米関係が悪化する中で排日予防啓発運動を展開するなど、天に召されるまでの57年間をハワイの日本人移民と日系人のためにささげた。
ハワイを舞台に活動した奥村の名前は、日本ではあまり知られていない。この企画展では、奥村が設立したマキキ聖城キリスト教会が所蔵する資料をもとに、複雑化する日米関係のもとでハワイの日系移民社会を支え続けた奥村の足跡をたどっていく。この教会は、現在も多くのクリスチャンが集う、ハワイ最大の日系キリスト教会で、その会堂が奥村の出身地にちなんだ高知城の天守にそっくりであることから「ハワイの高知城」として有名だ。
企画展「ハワイに高知城をたてた男 奥村多喜衛-同志社・ハワイ交流前史」は、来年2月10日(水)まで開催。入場無料。午前10時から午後5時(最終入館は午後4時半)まで。月曜日ならびに、12月23日、25日、28日~2016年1月5日は休館。開催期間中には、関連イベントとして、奥村多喜衛協会会長で高知大学非常勤講師の中川芙佐氏によるギャラリートーク(1月29、30日)と公開講演会(1月30日)が予定されている。詳細・問い合わせは、ハリス理化学館同志社ギャラリー(電話:075・251・2716、ホームページ)まで。