死者・行方不明者304人を出した昨年4月の韓国客船「セウォル(世越)号」の沈没事故で、韓国の大法院(最高裁)は12日、セウォル号の船長だったイ・ジュンソク被告(70)が乗客を救助せずに船を脱出したのは殺人罪に当たるとする2審判決を支持し、無期懲役を言い渡した。これにより、イ被告の無期懲役が確定した。韓国の聯合(れんごう)ニュースが伝えた。
聯合ニュースによると、大法院は「適切な時期の脱出命令だけでも相当数の被害者の脱出や生存が可能だった」と指摘。待機命令を出したままイ被告自身が船を脱出したことは、船長の役割を意識的かつ全面的に放棄するものだとし、「イ被告の不作為は、作為による殺人の実行行為と同等の法的価値がある」とし、「未必の故意」を認めた。聯合ニュースによると、大法院が「不作為による殺人罪」を適用した初の事例になるという。
大法院はこの他、1等航海士や2等航海士、機関長らの乗組員14人についても上告を棄却し、懲役1年6カ月〜12年が確定した。
事故は昨年4月16日、韓国南西部の全羅南道(チョルラナムド)珍島(チンド)沖で発生。セウォル号には当時、修学旅行中の高校2年生325人と引率教員14人のほか、一般客108人、乗組員29人の計476人が乗船していた。このうち295人が死亡し、いまだ9人が行方不明のままだ。韓国のフェリー事故としては、292人の死者を出した1993年の沈没事故を上回る大惨事となり、韓国社会に大きな衝撃を与えた。
裁判では、乗客を置き去りにした船長らに殺人罪が適用できるかどうかが争点となった。昨年11月の1審判決では、船長が脱出命令を出した後に脱出したとし、「未必の故意」を認めず、殺人罪は適用しなかった。しかし、今年4月の2審判決では一転し、脱出命令を出していなかったとし、殺人罪を適用。無期懲役を命じていた。