日本初のクリスチャン・ロック・フェスティバル「松原湖バイブレーション・ジャム」が、9月21日から23日までの3日間、松原湖バイブルキャンプ(長野県小海町)で開催された。メーンイベントは22日午後から開催されたロックライブ。サルーキ=など計7バンドが登場し、証しを交えた総演奏時間は8時間近くにも及んだ。キャンプファイヤーの火に照らされたアコースティックライブや、Samuelle によるカフェライブも開かれ、約40人の参加者は思い思いにクリスチャンミュージックを味わった。また、バイク・ツーリングも行われ、ロックンロールのリズムとバイクのエンジン音が森と湖面に響き渡るフェスとなった。
フェスティバルの開催を呼び掛けたのは、日本同盟基督教団の住吉英治牧師(勿来=なこそ=キリスト福音教会)と、八木信如(のぶゆき)さん(朝霞聖書教会)の2人。住吉牧師がバイク仲間の八木さんに、「ツーリング仲間とキャンプをしたい」と持ち掛けたことがきっかけだ。普段なかなか遠出することのできない牧師たちのために、家族みんなが自由に楽しめる企画にできないかと、クリスチャンのロックミュージシャンたちに声を掛けて実現した。
革ジャンに金のベルトといったロックないでたちで、開会集会に臨んだ住吉牧師は、自身の若き頃を振り返りつつ、若い時に創造者である神を覚えることの恵みを伝えた。賛美奉仕チームによるロック調の「いつくしみ深き」の伴奏に、参加者は「さすが日本初のクリスチャン・ロックフェス」と興奮を隠せない様子だった。
北は福島、南は岡山から、4歳から61歳までと幅広い世代のクリスチャンが集まり、ノンクリスチャンの参加もあった。参加の理由も、「Samuelle が流している情報を見て興味を持った」「バイク仲間に誘われて」「久しぶりに松原湖バイブルキャンプに来たいと思って良いタイミングを探していた」などさまざまで、「新しいクリスチャンの友達ができれば」と一人で来たという人も多くいた。
最高齢の参加者、藤井正男さん(61、日本同盟基督教団古河キリスト教会)は、茨城からバイクでやってきた。ずっとバイクに憧れていたという藤井さんは、59歳の誕生日に、家族から教習所代をプレゼントされてバイク乗りになったという。「神様が老後の楽しみを与えてくださって、30年前に救いに導かれた松原湖にバイクに乗って戻ってきた。今日は、みんなで白樺湖まで往復50キロくらいを走ってきた」と笑顔で話す藤井さんは、誰よりも若々しく見えた。
今回のフェスティバルは3日間寝食を共にするため、参加者とアーティストの距離が自然と近くなる。初日夜にキャンプファイヤーのあかりの元で行われたアコースティックライブでは、自然の中で奏でられる音楽に参加者全員の心は解放され、翌日のバーベキューでは、参加者、アーティスト関係なく打ち解けた様子で火を囲んだ。2日目午前にカフェライブを開催した Samuelle は、「米国では1週間続くようなクリスチャンミュージックのイベントがたくさんあるので、日本でも開催できたらと願っていた。アーティスト同士で一緒に泊まるということ自体が初めての経験で、自由な雰囲気が、自分にとっても刺激になっている。これを第一歩に、音楽のジャンルに関係なく協力していけたらと思う」と感想やこれからへの期待を話した。
2日目夜に行われたメーンイベントのロックライブには、八木さんがボーカルを務める「Peter’s Chicken Party」をトップバッターに、今年立ち上がったクリスチャン・ロックレーベル「Calling Records」に所属する、Indicator、ソルフェイ、Imari Tones、そして金沢から参戦した GeeBars、トリには今年で結成15年になるロックンフォークバンドのサルーキ=が出演した。ライブは湖を見下ろすチャペルで行われた。本業の牧師の務めが忙しく、残念ながら不参加となった牧師ROCKSからは、ライブの映像と共に、「キリストに生かされてロックしてます。お前らもロックしようぜ、ハレルヤ!」とビデオメッセージが届けられた。
出演バンド数が多いにもかかわらず、1バンド当たりの演奏時間がたっぷりあり、MCからバンドそれぞれの個性が伝わってくるのがフェスの醍醐味。1年間練習を重ね、今回が初お披露目となったという Peter’s Chicken Party は、ボーカルの八木さんが「集会で手を上げて賛美する人が苦手だった。周りの人と神様の関係が気になって仕方なかったとき、クリスチャンロックに出会った。広げた手を伸ばすよりも、握ったこぶしを突き上げる方が自然に感じられた」とロックに対する思いを話し、曲ごとに込めた信仰の証しを語った。
Indicator は、「わが心の目をひらいてください」をアレンジして賛美したり、普段のステージでは使わないアコースティックギターで演奏したりし、体を動かしたくなるリズムで観客と一体になった。ボーカルのあかしは、「さんざん好きに歌わせていただいてありがとうございました」と最後にあいさつ。ソルフェイのオオハラシンイチは、「俺は、ミカルになりたくない。ダビデでのように、この歌が神へのささげものでありたい」と話し、新曲を含む6曲を祈りを込めて歌った。Imari Tones の Tone は、「俺にとって、お客様は(言葉通りに)神様なんだよね。神にささげる音楽はそう簡単じゃないけど、人間の皆様も楽しんでくれていいんだぜ。何で俺たちが英語の歌ばかり歌ってるか知ってるか! ニッチな音楽だから母体数が多くないとやっていけないんだ! 君たちがもっと日本のクリスチャンを増やしてくれ!」と、いつも以上にロックな口調で観客に呼び掛けた。
おじいさん、おばあさんのキャラで親しまれる GeeBars(ジーバーズ)は、ロックとは程遠いツーピースバンドだが、「今日は、じじい、ばばあといった、ちょっと悪い感じでいきます。体を揺らさなくても勝手に揺れてます」と笑いを誘った。「どんな人にも当てはまるこの言葉は、非常にロックンロールな言葉だと思う」と、「ハッピーハッピーバースデー」という曲や、演歌賛美ロックなる曲を歌い、「いいぞ、じじい!」「うるせえ、ありがとうございます」と、観客との掛け合いも息がぴったり合ったステージを作り上げた。
最後に登場したサルーキ=は、これまでの『愛とロックンロール』『夢とロックンロール』『復活のロックンロール』に続き、今年3月にも『命のロックンロール』という「どんだけロックンロール好きなんだよ!と自分たちでも思う」タイトルで、6枚目のアルバムを出した。この15年の間、毎年新しいチャレンジをしながら前に進んできた2人は、直前までブラジル、米カルフォルニアでツアーを開催。ツアー中の体験を交え、「神様はすごい」と証しした。また、ボーカルの Chiyo は、コリントの信徒への手紙一13章13節を引用し、「大切な教えはたくさんあるが、これを飛ばしては何にもならない。日本には複雑な問題がたくさんあるが、怒りというのは悪魔の策略なんだと思う。神様からの『愛』を決して忘れてはいけない」と、新しいアルバムに収録された「平和ブルース」を観客と共に手を振って力の限り歌った。
全てのプログラムを終えて、八木さんは「計画通りというわけにはいかなかったが、神様の計画なんだと思える形で開催できたと思う」とコメント。来年以降の開催については、「この3日間で、新しい出会いがたくさん生まれた。今回と同じ形で続けていくことにこだわるのではなく、このエネルギーがまた新しい形を作っていってくれるよう、神様に委ねる」と話した。
閉会集会では、「主があなたを祝福しあなたを守られますように」と賛美しながら、参加者同士でハイタッチであいさつを交わし、口々に「楽しかった」「また会いましょう」と笑顔で帰途に着いた。