同志社香里中学(大阪府寝屋川市)が、2016年度以降に使用する歴史と公民の教科書に、それぞれ育鵬社発行の教科書を採択したことについて、採択に抗議し、撤回するよう求める声が上がっている。抗議・撤回の呼び掛けに対する賛同者・団体は、11日までに249人、34団体に上っている。既に第1次の抗議・申し入れ書が、同中を運営する学校法人同志社の総長と理事長、また同中校長宛に送付されており、第2次は14日に送付される予定。
抗議・撤回の呼び掛けをしている安田和人牧師(日本基督教団いずみ教会)によると、個人賛同のほとんどは日本基督教団関係者だが、カトリックを含む他教派の人々も含まれている。また、同中の卒業生や全国の市民からの賛同もある。団体賛同では、約半分がキリスト教関係の団体で、あとの半分は、教科書問題や教育問題に取り組む市民グループ、学校関係団体だという。
抗議・申し入れ書は、同志社の大谷實総長、水谷誠理事長、同中の福田耕治校長宛てられ、育鵬社の教科書を採択することは、キリスト教主義に基づいた同中のキリスト教教育だけではなく、戦後のキリスト教会が果たしてきた「宣教」をも問われると訴えてる。
安田牧師は同書の中で、育鵬社の教科書を採用している大阪市について、市教育委員の高尾元久氏が育鵬社と利害関係にあることが指摘されていることや、育鵬社の教科書の編集に関わる「教科書改善の会」主催の過去のシンポジウムで、自民党が育鵬社の教科書採択のために尽力してきたと、安倍晋三首相が発言していたことなどを取り上げ、「このような状況の中で、果たして教科書採択が『公正』の名の下に行われていると言えるでしょうか」と問い掛けている。その上で、「『自治自立の精神』『自由主義』を掲げる貴校が、何故、育鵬社教科書採択という愚行を犯したのか、大きな疑問を抱く」と述べている。
安田牧師は本紙に対し、「キリスト教関係者のみならず、『同志社香里がなぜ育鵬社の教科書を?』という驚きと疑問の声が私の元に多く寄せられている。同志社香里が社会の信頼を回復するためには、教科書採択を再考する他ないだろう。天皇を称え、集団的自衛権容認へと誘導する記述が多く見られる育鵬社の教科書は、同志社香里が掲げる『キリスト教主義』『人権教育』『国際主義』といった理念と合致するのかを問い掛けていきたいと思う」とコメントを寄せた。