「私たちはひとりひとり、隣人を喜ばせ、その徳を高め、その人の益となるようにすべきです」(ローマ15:2)
第一次南極地域観測隊の永田武隊長は帰国後の記者会見で、「一番苦労したのは、隊員同士の人間関係でした」と言いました。刑務所から出所してきた人も、「内では仲間との付き合いが一番大変だった」と言います。
私たちはどこに行っても、何をしても、人との関わりなしに生きていくことはできません。従って、人間関係を上手に築ける人は、何をしても成功すると言っても過言ではありません。
では、人間関係の成功の鍵は、どこにあるのでしょうか。
二宮金次郎は、「人間関係とは、互いの持っている徳を掘り起こすことである」と言いました。また、ある人は「他の人に対する最大の親切は、自分の持っている良き物を与えることではなく、相手の持っている良き物を明らかにしてあげることです」と言います。
ですから人間関係の成功の鍵は、上記の聖書の言葉にあります。「相手を喜ばせ、その徳を高め、その人の益となるようにしてあげる」ことです。
人は誉められると、さらに良くなろうと努力するのです。
ハーバード大学のロバート・ローゼンタール教授のグループが、興味深い実験をしました。実験用のネズミを、「天才ネズミ」と「平凡ネズミ」の2つのグループに分けて、学生たちに世話をさせました。そして6週間後に、迷路を通り抜けて出口に置かれたチーズに辿り着くのに何秒かかるかという実験をしました。そして予想通り「天才ネズミ」のグループの方が圧倒的に良い結果を出しました。
しかし、この実験には、実は秘密がありました。最初にネズミを分けるとき、教授は適当にただ2つのグループに分けただけでした。それを学生たちに委ねるとき、「こっちが天才ネズミ」「あっちが平凡ネズミ」と言って渡したのです。学生たちは本当にそう思い込んで、世話をする時「天才ネズミ」には、それにふさわしく丁重に世話をし、言葉を掛けていました。それに対して、「平凡ネズミ」の世話はぞんざいになっていたのです。その結果、「天才ネズミ」は、自分たちは期待されていると実感し、実験で良い結果を出しました。
ネズミでも期待されたり、誉められたりすると、意欲が向上し、その期待に応えようとするのです。これと同じ実験を、ある学校の校長先生がやりました。その結果、教師の期待度と学生の学力の向上には、深い関係があることが証明されました。
昔、アメリカのマサチューセッツ州ボストン郊外の精神病院の地下室に、アニーと呼ばれる少女が入れられていました。当時、精神障害者は決して治らない、人目にさらしてはならないと考えられていました。この少女は、この小さな部屋で一生を過ごす運命にあったのです。しかし、その病院で働く一人の掃除婦がその少女を可哀想に思い、食事を運ぶ度に“I Love You”と声を掛け続けたのです。その結果、その少女は心を開き、徐々に回復し、やがて学校を卒業し、教師の資格を取りました。そして、ある家庭に家庭教師として遣わされました。その家庭には、三重苦の少女がいました。
これが、ヘレン・ケラーとアン・サリバン先生との出会いです。一人の名もない掃除婦の励ましがなかったら、アニーは教師になれなかったでしょう。そして、ヘレン・ケラーのその後の大きな働きもなかったでしょう。
一人の掃除婦の励ましが、大きな大きな結果をもたらしたのです。
みなさんも、周囲の人々をもっともっと誉めてみてはいかがでしょうか。驚くべきことが起こると思います。
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