世界各国で活動する国際的なキリスト教団体の救世軍が、1865年に英ロンドン東部で活動を始めてから、今年で150年を迎える。英国にある万国本営(国際本部)は、創立150周年を記念する国際大会「創立150周年万国大会」を、7月1日から5日にかけて、ロンドンにある2万人以上収容可能な多目的アリーナ「The O2 Arena」で開催する。「無限(boundless)」をテーマに開催されるこの大会には、救世軍が活動する世界126カ国から人々が参加する予定。
テーマの「無限」は、創立者のウィリアム・ブース(1829〜1912)が書いた詩の一節「無限の救済、深い愛の海、キリストが上から与えてくださる、満ち溢れる恵み」から取られている。通常の国際大会は、週末の2日間で行われるが、この記念大会は5日間にわたって開催。世界中から集まる参加者を歓迎する水曜日のオープニングに始まり、日曜日の壮大な礼拝をもって幕を閉じる。期間中には、国際祈祷会やセミナー、コンサート、映画祭、スポーツ大会などのさまざまなプログラムが用意されている。大会では、救世軍を通して福音が世界126カ国に届けられたことを祝い、現在も各国で働かれている神を賛美し、これから先の将来に向けての革新の時となることが期待されている。
救世軍は、その組織の運営が、軍隊流に行われていることでよく知られる。ウィリアム・ブースは、英国のメソジスト教会の牧師をしていたが、36歳のとき、ロンドン東部の貧困者たちの救いのために働くよう、神の召命を感じ、ボランティアとして働き始める。人口が密集し、失業者が多く、貧困・犯罪がまん延していたその地域で、ウィリアムはさまざまな教派から集まったボランティアと共に働いた。
そのボランティアの集まりの中から、ザ・クリスチャン・ミッションと呼ばれる運動が起こり、そのリーダーとして、先頭を切ったのがウィリアムだった。その組織と規律は軍隊の慣例に大きな影響を受けるようになり、1878年に、彼は突然神の霊感を受け、「Salvation Army(サルベーション・アーミー)」という言葉を与えられる。その言葉に心動かされたウィリアムと側近の同労者たちにより、ザ・クリスチャン・ミッションは公式にザ・サルベーション・アーミー(救世軍)と呼ばれるようになった。
軍隊にちなみ、創立者のウィリアムは大将と呼ばれるようになり、その後、組織全体に階級、制服、記章などが取り入れられた。そして、組織のための指針、規律、用語など軍隊に倣ったものが採用されるようになった。ウィリアムは、この在り方を「軍隊の模倣をするのではなく、軍隊流に」と説明していたという。
創立から150年がたつ現在も、その軍隊流は受け継がれており、軍服を模した制服や、象徴して掲げられる軍旗は、救世軍を特徴付けるものとなっている。見るものに「軍隊」を思い起こさせるこれらのものは、教会が霊的な戦争と常に対峙しているということを、人々に思い出させる上で効果があるという。
世界中に広がり発展してきた救世軍は、プロテスタントの福音主義のキリスト教会として、各国で活動している。聖書の基盤に立ち、イエス・キリストの福音を宣べ伝えることを使命としているが、神の愛に動機付けられた働きとして、国際的な協力体制での救援活動や社会福祉事業などのさまざまな奉仕活動を行っている。