インドネシア検察庁は29日朝、麻薬持ち込み容疑で同国最高裁から死刑判決を受けていたフィリピン人出稼ぎ女性メアリー・ジェーン・フィエスタ・ベロソさん(30)の処刑を一時延期すると発表した。インドネシアの主要英字紙「ジャカルタ・ポスト」などが同日に伝えた。
同紙によると、検察庁は延期の理由として、ベロソさんの斡旋業者の一人が前日にフィリピン警察に出頭したのを受けて、フィリピンのベニグノ・アキノ大統領がインドネシアのジョコ・ウィドド大統領に対し、ベロソさんがその斡旋業者の証人として必要であるとして処刑をしないよう訴えていたことを挙げたという。
これを受けて、フィリピン外務省のチャールズ・ホセ報道官は29日午前2時半に記者会見を開き、ベロソさんの処刑が行われなかったことに安堵(あんど)の気持ちを示し、「主は私たちの祈りを聞いてくださった」と語ったと、同国のメディアが伝えた。
一方、ジャカルタ・ポストによると、ベロソさんと一緒に収監されていた他の8人の死刑囚は全て処刑された。処刑されたのはいずれも麻薬犯で、インドネシア人1人、オーストラリア人2人、ブラジル人1人、ナイジェリア人3人、ガーナ人1人とほとんどが外国人だった。
フィリピンのメディア「GMAニュース」によると、同国の一部のカトリック教会は28日正午、カトリック信者であるベロソさんが処刑を免れるよう、インドネシア政府に対する同教会の要求を象徴する鐘を鳴らしていた。
ベロソさんは、6歳と12歳の息子2人を持つ母子家庭の母親。家族や支援者たちは、ベロソさんが国際的な麻薬取引組織にだまされた人身取引の被害者だと訴え、ベロソさんの死刑中止を求める声が国際的に強まっていた。