米クリスタル・カテドラル教会の創設者で、伝道テレビ番組「アワー・オブ・パワー」の創始者として知られるロバート・H・シュラー牧師が2日、ロサンゼルスの介護施設で死去した。88歳だった。シュラー牧師の娘キャロル・シュラー・ミルナーさんら、シュラー牧師の家族が同日発表した。
シュラー牧師の孫であるボビー・シュラー牧師もツイッターに、「私の祖父ロバート・H・シュラーは今朝亡くなり、キリストとの永遠の命に入りました」と投稿した。
シュラー牧師は、妻のアブレラ・シュラー夫人を昨年2月に亡くしていた。地元紙「オレンジ・カウンティ・レジスター」によると、シュラー牧師は2013年に食道がんが見つかったが、化学療法や放射線療法を受けてはいなかったという。
シュラー牧師が牧会していた当時の会衆は、現在は孫のボビー・シュラー牧師が牧会する教会「シェパーズ・グローブ」に集っている。同教会は1日午後、シュラー牧師の健康状態が「急速に悪化している」として、祈りの課題をフェイスブックに投稿していた。
同教会は投稿で、「私たち『アワー・オブ・パワー』とシェパーズ・グローブの会員は、それぞれの創立者であるロバート・H・シュラー博士の健康状態が急速に悪化していると聞き、深い悲しみに沈んでいます」とコメント。「この困難な時に、シュラー牧師とその全てのご家族のためにお祈りください。私たちの最も尊い主であり救い主が、ご家族がシュラー牧師のもとに集まるとき、平安と慰めを与えてくださいますように」と祈りを求めていた。
シュラー牧師とアブレラ夫人は、1951年にカリフォルニア州オレンジ郡のガーデン・グローブで、ガーデン・グローブ・コミュニティー教会を始めた。最初は、ドライブインの映画館を借りて礼拝を行ったという。
1970年、シュラー牧師は多大な人気を集めることになる宗教番組「アワー・オブ・パワー」を開始。この番組は、現在に至るまで続いており、今はボビー・シュラー牧師が担当している。
その後、同教会は成長し、著名な建築家であるフィリップ・ジョンソン氏の設計で、全面ガラス張りの4千人収容可能な新会堂を3年かけて建設した。新会堂は「クリスタル・カテドラル」と名づけられ、ガーデン・グローブ・コミュニティー教会はクリスタル・カテドラル・ミニストリーズに名称を変更。クリスタル・カテドラル教会として広く知られるようになった。
一時は信徒数1万人を擁するまで成長したが、財政が悪化し、2010年には多額の負債を抱えるようになった。負債額は約4300万ドル(約51億6千万円)に上り、連邦倒産法第11章に基づく破産を申請した。
最終的には、会堂を米カトリック教会のオレンジ教区に5750万ドル(約68億3千万円)で売却。建物の名称は、「クリスタル・カテドラル」から「クライスト・カテドラル」に改名された。
一方、その時までにシュラー牧師の家族間の関係は壊れてしまった。シュラー牧師とアブレラ夫人はクリスタル・カテドラル教会を辞め、著作権を侵害されたとして教会を相手取り、数百万ドルの賠償金を求める訴訟を起こした。シュラー牧師夫妻はこの訴訟で、100万ドル(約1億2千万円)に満たない賠償金しか取れなかったため、連邦最高裁判所に上告したが棄却された。
クリスタル・カテドラル教会の会衆は少なくとも2つのグループに分裂。シュラー牧師の長女で、同教会の会長兼代表であったシェイラ・シュラー・コールマン牧師の「ホープ・センター・オブ・クライスト」、もう一つはボビー・シュラー牧師の「シェパーズ・グローブ」。
シュラー師夫妻には、一時期共にクリスタル・カテドラル教会で牧会した息子のロバート・A・シュラー牧師、シェイラ・シュラー・コールマン牧師の他に、ジーンさん、キャロルさん、グレッチェンさんの合わせて5人の子どもがいる。孫のボビー・シュラー牧師は、ロバート・A・シュラー牧師の息子。