聖書で最も人気のある節は、何も思い煩うなと励ます聖句であると、オンライン書店大手の米アマゾンが発表した。
アマゾンは最近、最も人気の高い書籍から人気のある一節を取り上げたリストを公表した。人気の高い書籍には、『ハンガーゲーム』『ハリー・ポッターシリーズ』『高慢と偏見』『聖書(NIV)』などが選ばれた。
アマゾンの発表によると、下線などを引いて一般に好まれている聖書箇所は、フィリピの信徒への手紙4章6〜7節。「どんなことでも、思い煩うのはやめなさい。何事につけ、感謝を込めて祈りと願いをささげ、求めているものを神に打ち明けなさい。そうすれば、あらゆる人知を超える神の平和が、あなたがたの心と考えとをキリスト・イエスによって守るでしょう」と、使徒パウロが教会に教え諭す箇所だ。
この聖句に引き付けられる読者は、不安や精神的なストレスを抱えているのかもしれない、とクリスチャン心理学者で南部バプテスト神学校教授のエリック・L・ジョンソン氏は言い、この節を直接的な命令と受け取ることに対し警告する。
「すぐにそれを実行するようにと神が命令を与えているとは私は思いません。なぜなら、不安の矛盾の一つに、心配しないようにしようと思えば思うほど、不安が募るということがあるからです。だからパウロが心配するのをただやめるようにと言っていると解釈すべきだとは思いません」とジョンソン氏は言う。
むしろジョンソン氏は、神にある信仰を通して、不安からの解放を見出すように神は招いていると話す。
「信仰者は、キリストの死と復活のゆえに、神との永遠の関係に入るのです。そしてキリストと一体になるときに、全ての問題は基本的にその中で解決されるので、もう何も心配する必要はないのです」とジョンソン氏。だが、心配からの解放は瞬時に起こるものではなく、むしろ過程を経て起こるものだと説明する。
「私はこの聖句は、神が私たちを不安から解放したくて、その解放を見つける方法を提供するための励ましの言葉であると見なしています。しかし、いくらかの練習も必要となります。それは神ともっと一緒の時間を過ごすことを学ぶことだったり、私たちの心配や恐れを神に委ねる方法を学ぶことだったり、私たちの感じるプレッシャーを手離すことだったりします。それは生活習慣をつくり直すことかもしれないし、黙想し祈ることかもしれません。キリストと共に黙想して祈るのはとても大事なことで、ペトロの手紙5章7節でペトロが言う『思い煩いは、何もかも神にお任せしなさい』というのも素晴らしい聖句です」とジョンソン氏は言う。
社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの不安障害や恐怖症は、18歳以上の米国人4千万人に影響を与えている。全米不安抑うつ協会(ADAA)によると、不安症は米国で最も一般的な精神病で、治療可能な病であるが、患者の3分の1しか治療を求めないという。
2013年のライフウェイリサーチによると、「新生したと自認する福音主義や原理主義のキリスト教徒」の48パーセントが、聖書の勉強や祈りだけで、うつや、躁うつ病、統合失調症のような精神病を克服できると信じているという。
しかし、ジョンソン氏のようなキリスト教の指導者やカウンセラーは、精神的な健康においては、宗教的な治療と、非宗教的な治療の併用を勧める。
不安症と戦う人々に対して、「聖書は『薬物とカウンセリングを賢く使う』ことを禁じてはおらず、薬物治療とカウンセリングは研究を通して神から与えられた『一般恩恵』だ」とジョンソン氏は言う。
サウスカロライナ州のペリー・ノーブル牧師は「不安とうつに関する5つの神話」と題する記事を書いており、その中で「私がよく人に言うのは、地獄のテーマソングは『もっと働け、もっと一生懸命努力しろ』なのです。あまりに長い間、キリスト教徒たちは恵みを信じると言いながらも、心配や不安やうつさえも、自分たちの努力によって克服しようとしてきました」と言う。
不安と自殺願望と戦うために、2012年から抗うつ薬を服用し始めたことを最近明かしたノーブル牧師は、「私は抗うつ薬を飲んでいるが、人生のこれまで以上にイエス様を今愛しています」と語った。