特定非営利活動法人「北関東医療相談会」(通称:AMIGOS=アミーゴス)は11月30日、難民認定を申請中で医療を受けられない仮放免者のために、カトリック高崎教会(群馬県高崎市)で医療相談会を無料で開催した。同会事務局長でカトリックさいたま教区終身助祭の長澤正隆氏は、「医療相談会の運動がもっと広がってほしい」と語った。
長澤氏は本紙とのインタビューに答え、新約聖書の使徒言行録2章にある信者の生活に触れつつ、「貧しい人に心を尽くして、今の時代に神の国を地上にどうやってつくれるかが、聖職者としての私の課題だ」と述べた。また、「日本でも非正規雇用という形で小さくされていく人たちに向かって支援をするのは、キリスト者の一つの務めだ」と付け加えた。
「全ての人が健康と平和な生活ができる共生社会の実現を目指し、特に外国籍・生活困窮者のための保健、医療又は福祉の増進を図る活動、社会教育の増進、災害救護、人権の擁護、国際協力などの活動を目的とします」という同会は、1997年群馬県で「外国人の為の医療相談会」として発足、以来活動を続けてきた。長澤氏によると、今回の医療相談会はこれまでの活動の「原型」だという。
この相談会の受付担当者によると、この日に受診した仮放免者はアジア諸国や南米の出身者ら24人。そのうちC型肝炎患者でイスラム教徒の男性は「長澤さんのおかげで本当に助かった」と何度も強調した。
また、この相談会で通訳を務めたある女性は、「こうして皆で集まって医療相談会を開くのはとてもいいこと。皆で力を合わせれば前へ進めると思います」と語った。
医療相談会・結果説明会の概要は、同会のホームページに英語、韓国語、ポルトガル語、タガログ語、ベトナム語、タイ語、スペイン語、日本語で事前に掲載されていた。
会場となった高崎教会の多目的スペースであるエンジェル・ホールは、独立行政法人国立病院機構の7階建ての大きな医療施設である高崎総合医療センターから歩いて数分のところにある。しかし、現在の法制度の下では、仮放免者は医療を受けることができず、健康保険証もなければ、仕事に就くことも認められていない。
それでも、この医療相談会では、子宮ガン検査などのためのレントゲン車が2台用意され、済生会グループから白衣を着た医師をはじめとする医務スタッフが加わった。検査項目は、胸部X線、血圧、血液検査、尿検査、問診、身体測定、子宮頸ガンの合計7つ。問診記入や診察・結果報告日の伝達も行われた。
日曜日であったこの日、この医療相談会に携わった茨城県や群馬県のカトリック信者は午前8時半から高崎教会のスタッフミサに参列した。その後、通訳なども含むボランティアのスタッフが9時にエンジェル・ホールに集合。レントゲン車を搬入した上で集合写真を撮り、10時から医療相談会を開始した。
また、この医療相談会では、群馬県弁護士会による無料の法律相談も行われた。同会の弁護士によると、在留資格に関する相談が多いという。また、ホールの壇上には子どもたちのためのキッズコーナーも用意された。
今回の医療相談会は、群馬県健康づくり財団が協賛し、群馬県、高崎市、群馬県観光物産協会、群馬県弁護士会、青年海外協力隊群馬県OB会、カトリック群馬使徒職協議会、カトリック栃木県使徒職評議会、赤い羽根、三井物産、上毛新聞が後援した。
高崎教会の入り口にはこの日の医療相談会のお知らせが張り出され、教会のウェブサイトにある「今月のスケジュール」にもこの医療相談会が記されていた。この日の医療相談会は午後2時半に受付を終了した。
今回の医療相談の結果説明会は12月21日に同じく高崎教会で行われる予定だが、長澤氏によると、同教会の建物は老朽化し耐震構造上の問題があるため、今後は同教会での医療相談会はしばらくできないという。そのため、次回は埼玉県川口市で新たに医療相談会を開く予定。また、来年の3月には栃木県益子町で相談会を行う。
北関東医療相談会はその概要について「生活困窮している方々の検診、検診結果の説明、要治療者のフォローを実施しているボランティア団体です」と、ホームページで説明している。一方、「近年、日本国籍の方々にも同様の支援が必要なことが分かり、国籍を問わない支援活動にきりかえて続けています」という。