「Let's go! hand in hand」のイベントは、毎年どれだけの人が集まってくれるかがいちばんの課題。像と像の間の約540メートルの距離をうまくつなぐには最低でも500人の手が要るが、高知市内でも中心部からは車で約30分はかかる桂浜まで何百人が来てくれるか。しかも、ちょうど中間辺りを県道が貫いているため、これを封鎖して行うには朝早い時間帯でないと警察の許可が下りない。時間もわずか2分程度と決まっており、そのためにどれだけの参加者があるか、イベントの発案者であり、主催する同記念館の森健志郎館長(73)は毎年、この朝のために眠れない夜を過ごす。しかし、ふたを開けてみれば1回目は950人、2年目はそれよりは減ったものの650人と集まり、握手の鎖は途切れることなく続いてきた。
今年もその朝がやってきた。「10、9、8、7・・・」、森館長のカウントダウンが始まり、8時半ちょうどに太平洋を見渡すように並んだ750人の手が一斉につながれ、空に向かって大きく上げられた。「それでは今年もいくぜよ」と言って館長の音頭でみんなが一つずつ大きな声で言葉を発する。
館長「一つ、家族を大切にしよう!」、みんな「家族を大切にしよう!」、館長「お年寄り、先生を敬おう!」、みんな「お年寄り、先生を敬おう!」、以下、「友達と仲良くしよう!」「思いやりの心を持とう!」「正々堂々と歩もう!」「志は高く持とう!」「勇気を持って行動しよう!」と続き、最後に「Let's go! hand in hand、手をつないで前へ進もう!!」と大合唱で締めくくった。龍馬の船中八策ならぬ、森館長作の「現代こころ八策」だ。
「こころ八策」を叫び終わると2分ぴったり。どこまでも続く太平洋に向かい、この日、この場所で初めて会った人たちが手と手をつなぎ、ただこれだけの単純な文言を青い空、青い海に向かって大声で叫ぶ。ほんとにそれだけのイベントだが、みなの顔が輝いている。笑顔でない人はいない。その瞬間、手だけでなく、心と心がつながっていると確かに感じる。
毎年、このために北海道や関東、九州からやってくる龍馬ファンもいる。せっかくゆっくりと眠れる休日の朝だが、この瞬間を楽しみに3年連続足を運ぶ高知県人も多いのはもちろんだ。
手をつなぎ終わった後、3回連続で参加している坂本家九代目の坂本登さんがマイクを取り、「この龍馬晴れの好天の下、今年もこんなに大勢の方の握手の鎖がつながりました。このつながりをもっともっと世界へと広げていきたいですね」と感激の面持ちであいさつ。自身カトリック信者でもある森館長は坂本さんとしっかりと手を握り、「混迷する現代の世相は幕末に通じる。愛に満ちた龍馬の精神は、今の社会にこそ必要なメッセージだ。たった2分間のために手と手をつなぐ。そしてそこに熱い思いが加わる。この平和を願う思いをもっともっと世界へと広げたい。人と人とがつながることの大事さを実感してほしい」と力を込めた。
イベントを共催する「坂本龍馬財団」では、この博愛に満ちた龍馬スピリッツを全世界に発信するため米ニューヨークに龍馬ミュージアムを建設する夢を持っている。若者の人材育成事業も取り組んでおり、趣旨に共鳴してくれる人の参加を呼び掛けている(一般正会員は入会金1000円、年会費5000円)。来年のシェイクハンドにはぜひ参加したい、という申し込みも大歓迎だ。参加希望、問い合わせは、龍馬財団の代表理事も務める森健志郎龍馬記念館館長(080・3169・9126)、または県立坂本龍馬記念館(088・841・0001)まで。
■ 750人が龍馬スピリッツ発信:(1)(2)