左から右でも、右から左でもなく、下から上にページをめくることができる「フリップバック装」の聖書が発売された。スマートフォンでスクロールするような感覚で、片手だけでページを上に開いて読むことができる全く新しい聖書で、表紙は米ニューヨーク在住のクリスチャン画家、マコト・フジムラ氏が手掛けた斬新なデザインとなっている。
発売されたのは『新共同訳 新約聖書 フリップバック装』(日本聖書協会、税抜2500円)。下から上にページをめくり、360度無理なく開くことができるという特性を持った「フリップバック装」は、ヨーロッパで話題の新しい書籍のスタイルだという。同協会によると、日本でのフリップバック装の書籍は一般書も含めこのフリップバック装聖書が初だという。
サイズは118ミリ×80ミリ×13ミリ。胸ポケットにもすっぽり収納できる小型サイズだ。用紙は1平方メートル当たり22グラムの世界最軽量クラス(フランス製)のものを使用しており、重さは120グラムと卵2個分程度しかない。印刷はオランダで行なった。
表紙のデザインには、ホワイトハウスの文化担当顧問を務めた経験のあるマコト・フジムラ氏の作品「Golden Sea」を採用した。聖書の表紙にこうしたモダンなデザインを採用するのは、同協会が発行する聖書の中では初めてだという。聖書と言えば、黒の皮表紙のシックな書物を連想するかもしれないが、デザイン志向の強い現代人に合わせ、アートを意識した。
フジムラ氏は、『ジェームス王欽定訳聖書』の誕生400年を記念し出版された『Four Holy Gospels(四福音書)』(2011年)の挿絵を担当した。この挿絵は抽象画で描かれたが、これまでの聖書の挿絵は写実画がほとんどで、フジムラ氏によって初めてモダンアートの挿絵が入った聖書が誕生したという。
『Four Holy Gospels』の挿絵制作作業は約1年半にわたったが、この間、「細部まで神経を砕く作業からの息抜きとして、大きなキャンバスに雲肌紙を張り、展覧会のためでもなく、テーマも決めずに、与えられた賜物である感性によって描いた」のが、「Golden Sea」だという。
「非常に軽いので、アクセサリーのように携帯して、気軽に開いていただければ」と同協会は勧めている。『新共同訳 新約聖書 フリップバック装』は、日本聖書協会の直営オンラインショップ他、全国のキリスト教書店で購入できる。