カンボジアのトゥン・チャナレットさんの人生は20代初めに劇的に変えられてしまった。
カンボジア共産党「クメール・ルージュ」と戦う抵抗軍の兵士だったチャナレットさんの足は、カンボジアとタイの国境付近で地雷を踏んだ時に粉々にされてしまった。彼が22歳の時だった。
その頃、彼は自らの命を絶つことを考えた。カンボジア西部にあるシエムリアップで開かれている世界教会協議会(WCC)宗教的友好のためのアジア青年トレーニング(YATRA)で12日、参加者たちに当時の想いを語った。
人の生涯の中には、WCC第10回総会が諸教会に向けて発表した呼び掛け「正義と平和のための巡礼」を始めることが何を意味するのかを示すものがある。チャナレットさんの人生は、そのような物語の一つである。
父親と姉妹をクメール・ルージュ政権の残虐行為で失い、自分の家族を養うために常に苦闘していたのに加え、地雷による事故により足を失ったのにもかかわらず、チャナレットさんは世界中の地雷を禁止するための声となった。
他の地雷被害者たちに加わって、チャナレットさんは地雷禁止を要求する100万人を超える署名をカンボジア人から集めた。この要請書は、国際地雷禁止運動(ICBL)の重要な加盟団体であるカンボジア地雷禁止運動の設立へとつながった。
ICBLを代表して、チャナレットさんは、国際コーディネーターであるジョディー・ウイリアムスさんとともに、1997年、ノーベル平和賞を受賞した。仏僧や、ルーテル世界連盟、イエズス会難民サービス、チャーチワールドサービス、カリタス、オーストラリアカトリック救援、メリノール女子・男子修道会を含むキリスト教団体もこの運動に参加していた。
カンボジアではこれまで、6万4千人を超える地雷被害者が出ている。
「人間として、私たちはみな自らの心の中に地雷を持っているのです」とチャナレットさん。「でも花も持っています。私たちに必要なのはその地雷を取り除き、その花を咲かせることです。この花を私たちがいつ咲かせるか知っていますか」と、YATRAの参加者に問い掛け、自ら答えた。「私たちが助け、他の人たちのために何かをする時です」
カトリック信徒であるチャナレットさんは、YATRAをシエムリアップで受け入れている国際的なカトリックNGO「イエズス会難民サービス」で働いている。
約30人の若いアジアのクリスチャンたちが集まるYATRAで、参加者たちにチャナレットさんが語った省察は、多宗教で政治的に複雑なアジアという地域で正義と平和という目標のためにどのように働くのかについての議論の中で、一つの感銘を与えるものとなった。
チャナレットさんは、1997年と2002年に来日したことがある。YATRAは21日まで続く予定だ。