スーダンでキリスト教徒として育てられ、キリスト教徒の男性と結婚したことで今年2月に逮捕され、死刑と鞭打ち100回を宣告されたメリアム・ヤヒア・イブラヒム・イシャグさん(27)が、獄中で女の子を出産した。同国に関する英文ニュースメディアであるスーダン・トリビューンなど複数のメディアが27日付で報じた。
メリアムさんに対する判決については、同国首都のハルトゥームにあるスーダン聖公会内務管区が21日付で報道声明を発表し、判決を強く非難、同国法務省にこの事件を再調査し彼女を直ちに釈放するよう求めていた(下記参照)。それによると、彼女は出産後に処刑されるという。
一方、世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事は23日、メリアムさんに対する判決に「深い憂慮」を表明し、スーダンのオマル・ハサン・アフマド・アル=バシール大統領に対し、「この不正で不当な判決の実施を防ぐ」よう強く要求した。
また、世界福音同盟(WEA)信教の自由委員会も16日、メリアムさんに対する判決は誤審であり、国際人権法やスーダン自体の憲法のみならず、イスラムとイスラム法にも違反していると主張した。
スーダン聖公会内務管区による報道声明の全訳は次の通り(ただし、主教のEメールアドレスは省略)。
スーダン ハルトゥーム
スーダン聖公会内務管区
報道声明
メリアム・ヤヒア・イブラヒムさんとスーダンの裁判所による死刑判決の件はじめに
2014年5月15日(木)、ハジ・ユセフ裁判所で、メリアム・ヤヒアさんは、イスラム教徒からキリスト教徒に変わったことや、キリスト教徒の男性と結婚していることから姦通を犯したとして、死刑判決と鞭打ち100回を宣告された。
メリアム・ヤヒア・イブラヒム・イシャグさんはキリスト教徒の母親(エチオピア正教)とイスラム教徒の父親から生まれた。彼女の父親は彼女が6歳の時に彼女たちを置いて出ていったが、彼女はその母親によってキリスト教徒として育てられた。メリアムさんはスーダン系米国人でキリスト教徒の夫と結婚している。メリアムさんは、彼女の父親がイスラム教徒だったからというだけのことから、キリスト教に改宗したとして、死刑判決を受けた。実は、メリアムさんがキリスト教徒になっているのは、キリスト教徒であるその母親に彼女が育てられてからのことである。報告によると、メリアムさんと、その夫、そして彼女たちの息子は、自分たちの宗教を変えたことで、みな逮捕されたが、しかしその時、夫は釈放された。メリアムさんは自分の姦通によって死刑判決と鞭打ち100回を宣告されたが、それは彼女がキリスト教徒の男性と結婚することを受け入れたからだ。彼女たちの結婚は無効にされている。いま、メリアムさんと彼女の息子は、出産するまで仮入獄しているが、それから彼女は処刑される。
1. 上記によると、メリアムさんは生まれた時からイスラム教徒になったことが一度もない。彼女がイスラム教徒の父親から生まれたからといって、彼女がイスラム教徒だということにはいかなる場合においてもならない。なぜなら、彼女はその母親によってキリスト教徒として育て上げられたからである。
2. メリアムさんに対して裁判所が下した評決は、キリスト教徒とスーダンの教会に対する明らかな迫害である。
3. 裁判所による評決は、スーダンのキリスト教徒に対する人権と信教の侵害である。
4. この判決は、信条と礼拝の自由に関する2005年スーダン憲法の第38条にさえ反している。「如何なる個人も、法の定めと公共の秩序に従って、礼拝や教育・実践ないし実行によって、宗教的な信条と礼拝の自由に対する、そして自らの宗教ないし信条を公にしてそれと同じことを表す権利を有し、何人も自らの自由意思による同意をしていない信仰を採り入れることを強制されない」
5. きょう2014年5月21日のアルメグハール新聞によると、ハルトゥームのカラクラでは現在、イスラム教徒からキリスト教徒へ改宗したことで告発された若い男性に関する、もう一つの裁判が行われているという。この若い男性もメリアムさんと同じ運命に直面するかもしれない。
スーダン聖公会内務管区は、この裁判所の判決をここに強く非難するとともに、法務省に対し、メリアム・ヤヒアさんの事件を再調査し、彼女を直ちに釈放するよう要求する。彼女には自らが選んだ宗教を信じる自由がある。スーダン聖公会はまたカラクラの当局に対し、その若い男性を釈放するよう要求する。彼の信仰に対する最後の審判は、神のみにゆだねられるべきである。
この共和国の大統領が呼びかけた、対話と共存、そして愛の精神が、支持されるべきである。
2014年5月21日
次期首座主教
ハルトゥーム主教
エゼキエル・コンド