妊婦の血液からダウン症などの染色体異常を調べる新型出生前診断は、陽性反応が出た場合も実際には異常がない可能性があり、確定検査を受ける必要があるが、陽性と判定された141人のうち、少なくとも2人が確定検査を受けずに人口妊娠中絶していたことが11日、分かった。時事通信などが伝えた。
新出生前診断は、妊婦の血液に含まれるDNAから、ダウン症などの3種類の染色体異常について、胎児にあるかどうかを調べるも。陰性の場合は100%近い確率で異常がないと分かるが、陽性の場合、ダウン症では約20%で実際には異常がない可能性があり、他の2つの染色体異常ではさらに精度は低く、いずれも羊水検査などの確定検査が必須となっている。
しかし、今回、日本医学会の集計で明らかになったところによると、これまでに7775人が診断を受け、陽性と判定された141人のうち、2人が確定検査を受けないまま中絶を行ったことが分かった。
日本経済新聞は、この2人の事例について下記のように詳しく伝えている。
同学会によると、2人は陽性と判定を受けた病院とは別の病院で中絶した。うち1人は、判定を受けた病院で結果に関する遺伝カウンセリングを受け、おなかに針を刺す羊水検査も予約したが、検査当日に来なかったという。
同学会検討委員会の福嶋義光委員長(信州大教授)は同紙に対し、「羊水検査を受けて確定するという理解が不十分だったのではないか。社会全体で検査の内容について理解を深めてほしい」と語っている。
新型出生前診断は日本では昨年4月から、同学会により認定された施設での実施が始まり、昨年11月の時点では、診断を受けた3514人のうち、67人が陽性と判定され、確定検査後、染色体異常が確定した56人の9割以上が中絶を選んでいる。
新型出生前診断は、採決だけで結果が分かり、陰性の場合は危険な検査を受けずに済むメリットがある。診断の対象者は、胎児の病気リスクが高くなる高齢出産者などに限定されているが、今回の事例のように、確定検査を受ける前に新型出生前診断の結果だけで中絶してしまうことが懸念されていた。
同学会は、他にも同様の事例がないか調べているという。