第5章 心傷つき病む子どもたちの癒やしへの道
Ⅲ. アガペーによる全面受容の癒やしへの道
2)アガペーによる全面受容の癒やしが成されるための具体的な道
■ 癒やしへの具体的な道
②子どもの要求を無条件で全面的に受容することによる和解と真摯な受容の証明
前述の子どもへの謙遜にして真摯な謝罪と加害者告白ができたならば、更に具体的な次のステップに進むことができます。
そこで次のステップは何でしょうか。それは子どもの要求を全面的に、かつ無条件で受け入れるということです。これは非常に大事なステップで、これによって両者の間に長い間大きなわだかまりとなり、しこりとなり、断絶と対立関係を生み出し続けてきた不和の感情と関係が、一気に緩和され、和解が生まれます。
そこには長い間待望してきたあたかも“春の雪解け”のような和らいだ感情と関係が生み出されるのです。これはまさに和解のバロメータでもあり、両者の間に和解の夜明けが遂に到来したことを告げる明けの明星の如きものです。のみならずこのアガぺーによる“無条件的全面受容”は、前述した謙遜で真摯な謝罪と告白が、いかに真実なものであったかを相手に納得させることのできる最良の受容証明でもあるのです。
ここでよくよく留意しなければならない、確実に“和解につながる全面受容”の重要なポイントは、以下の諸点です。
ⅰ. その第一は、何よりも“無条件的”であることです。
よく子どもの要求を受け入れようとする時、母親がしばしばそういう場面でその子に対して交換条件を出す人がいます。この交換条件付き受容ということは、心傷つき病んでしまってはいない健常な子どもたちに対しては、その子になんでも要求したことはいつでもその通りしてもらえるものだと勘違いさせてしまったり、本人自身は何の努力も労苦もしないまま極めて安易に人に物事を要求する人間にさせてしまったり、いわゆる子どもを甘やかさないために大いに有効な教育手段となります。むしろそれが彼らの良き励みとなり、かつ努力を促進させる極めて効果的な精神鍛錬の道となります。
しかし、すでに心傷つき病んでしまっているウルトラ良い子たちにとっては、残念ながら効果がないばかりか、かえって有害であり逆効果になってしまうのです。これは彼らにとっては、更なる重荷となり、プレッシャーとなります。彼らの傷つき病める心理からすれば、ただひたすら今は全面受容されたいのです。甘えてはならないのではなく、むしろ今こそ無条件で甘えたいのです。そして長い間抑圧され、苦悩し続けてきた自らの心を癒やしたいのです。
彼らにとっては条件付きの受容では、アガペーを感じ取れないのです。ここですでにくどいほど学んできたアガぺーの定義を思い起こしてください。アガぺーとは、「何一つ見返りを期待しない」一方方向の無条件的愛なのです。
残念ながら、この長い間心傷つき病んできたウルトラ良い子たちの、極限的に追い込まれてしまい出口が分からなくなってしまっている異常心理を、深く理解し、アガペーをもって無条件的に全面受容してくれる人々は、ほとんどいないのです。これは決して甘やかせでも、過保護でもないのです。心傷つき病み、かつ異常心理に追い込まれてしまっている哀れなこの子たちを癒やし、救う最良の近道がここにあるのです。
今ここを読まれている“心傷つき病んでいるウルトラ良い子”を持つご両親たちよ、いや特にお母様たちよ、この彼らの心理をよくよく悟って、愚か者にでもなったつもりで、この世の世俗的価値観に支配されている人々の嘲りや非難を覚悟して、あなたの病めるお子様を無条件的なアガペーの全面受容の愛をもって受容してやってはいただけないでしょうか。その時あなたと子どもさんの間には、和らぎと和解が生み出され、きっと癒やしが急速に促進されることでしょう!(続く)
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