日本バプテスト連盟の「憲法改悪を許さないバプテスト共同アクション」は憲法記念日の3日、同連盟の北関東・東京・神奈川の各地方連合社会部とともに作る実行委員会の主催により、同連盟初の「憲法フェスティバル2014」を恵泉バプテスト教会(東京都目黒区)で開催し、120人が参加した。参加者たちは平和の祈りと賛美、劇、リレートークやミニコンサートなどを通じて、日本国憲法第9条の大切さを共に考えた。
主催者によると、同様のフェスティバル(九州集会)が同じ日に同連盟の福岡バプテスト教会でも行われたという。この集会では、同連盟常務理事の吉高叶牧師による講演が行われた。吉高牧師によると、131人の出席者があり、7人のリレートークで進行した。
東京で開かれたフェスティバルでは、始めに花小金井バプテスト教会前牧師の藤澤一清氏が挨拶。藤澤氏はエフェソの信徒への手紙2章14節を引用し、自らが体験した朝鮮戦争とベトナム戦争による特需にふれた。その上で、藤澤氏は「政府や与党がなぜ戦争をしたがるのかを肌身で感じてきました。つまり、儲かるからです」と語り、その動機がお金であると述べた上で、平和のために祈った。
藤澤氏の挨拶後、会衆はともに「キリストの平和」という祈りの歌を合唱した。
その後、同連盟北関東地方連合の青年有志が作る「きたかんユース」が「茶色の朝」という劇を上演した。フランスとブルガリア国籍をもつ臨床心理学者で社会学者のフランク・パヴロフによる反ファシズムの寓話を元にしたこの劇では、茶色以外の犬や猫を処分する「茶色犬猫飼育法」や、政府に批判的な新聞「デイリーシティー」や同紙の本の発禁など、茶色以外のものを禁じる法律によって、社会全体が茶色に染まる様子が描かれた。
この劇では、社会が茶色にそまることに違和感を感じなくなっていき、周りによく思われればよいと思う人々が、茶色に守られた安心も悪くないと思うようになる心理を表現。そして、茶色党が「茶色ペット特別措置法」を上程してから、それに抵抗できなかった登場人物が、「ゴタゴタに巻き込まれたくなかったから」と理由づけをし、「みんなそうじゃないか」と述べて幕を閉じた。
劇の上演後、司会者は「なぜこの劇が演じられたか、皆さんお分かりかと思います」と述べた。
劇の後には、4人の証しを含むリレートークが行われた。1人目の蛭川潤子さん(洋光台キリスト教会員)は、世界の平和への取り組みについて気づかされたことについて語った。蛭川さんは、「私は戦後生まれで、自分にとって戦争は遠いことだったが、戦争の実相にふれて変えられていった」と述べた。
同連盟の女性連合主催の沖縄学習ツアーに6回参加したという蛭川さんは、「戦争は奪うもの。平和を作るのは大人の責任だ。戦争で子供の命が奪われ、たくさんの少年少女たちが尊い命を落とした。子供の命を守るべき大人が子供の命を奪った。こんなことはあってはならない。平和への誓いをしなければならないのが大人の責任だ」と話した。
蛭川さんは沖縄で聞いたひめゆり看護隊の少女の話を引用し、「子供を兵士に仕立てたのは誰の責任か?」と問いかけるとともに、「聖書は、平和を作る者は幸い、命を尊ぶ者は幸いと語りかける。憲法9条を守り、世界に広めよう」と結んだ。
これに続いて会衆は平和を祈る賛美歌「このこどもたちが」を合唱した。
リレートークの2人目には、アメリカ人英語講師で映画監督のリラン・バックレーさんが登場。バックレーさんは、在日米軍に日本政府が提供している思いやり予算の不条理さと矛盾を提示し問いかけるドキュメンタリー映画「ザ・思いやり予算」を作っており、自らの体験を日本語で語った。バックレーさんによると、思いやり予算に日本国民の税金から6兆円が使われているという。
バックレーさんは、「(イラクの首都)バグダッドでの米軍による無差別殺戮(りく)をユーチューブで観て怒り、眠れなかったことから(この映画を)作っている」と、映画制作の動機を語った。
この映画を作るために米国カリフォルニア州で取材をしたというバックレーさんは、取材中に相手に怪しまれないために、米大リーグのドジャーズのTシャツを着て帽子のつばを後ろにしてかぶっていたと、それらを会衆に見せながら語った。
バックレーさんはまた、「沖縄の辺野古で計画されているV字型滑走路や、米軍人の家族のための高層マンションなどが作られることに、保守的なアメリカ人はNoと言うが、米軍自体にはNoとは言えない」と語った。その上で、「キリストの愛をもちながら一緒に頑張っていきたい」と自らの抱負を述べた。
そしてリレートークの3人目には、花小金井キリスト教会員で大学1年生の廣島真希さんが証しを語った。
廣島さんは、「私にとって憲法9条は希望。それが変えられようとしている。今の政府は目先の安全を求めて集団安全保障を推し進めようとしている。これは9条でいう交戦権の否定に違反している」と指摘。その上で、ローマの信徒への手紙8章24節~25節を引用し、「目先の安全ではなく恒久平和を待ち望むことが必要だ」と結んだ。
そしてリレートークの4人目には、「憲法9条にノーベル平和賞を」という運動を始めた鷹巣直美さんが、その運動への自らの関わりの経緯を語った。ノーベル委員会は4月9日、日本国憲法、特に9条を今まで保持している日本国民がノーベル平和賞に推薦されたことを、「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会(神奈川県相模原市)に通知した。
大野キリスト教会員で東京バプテスト神学校の学生でもある鷹巣さんは、「子供たちはどこの子でもかわいくて、子供たちを泣かせたくない。難しい政治的なことはよくわからないが、みんな仲良くできればと思って始めた」と、この運動に対する自らの動機を語った。
鷹巣さんによると、この運動の経緯は「たまたま」の偶然がつながる連続だったといい、「全て皆様のお祈りと神様のおかげ」だという。
鷹巣さんは、この運動への関わりについて、「聖書を開けば、神様はすべてをご存知。神様の御言葉に押されて、とにかくやりなさいという感じ」と、信仰に基づく自らの心境を語った。「みなさんがお祈りに覚えてくださってここまでやって来られていることを感謝したいと思います」
3日付の神奈川新聞には、鷹巣さんがクリスチャンであることや、安倍首相のためにも祈っていることなどが書かれている。
「ノミネート(推薦受理)されてからは一線を退いて子育てに専念し、一人の(実行)委員として活動しています」と、2児の母親でもある鷹巣さんは語った。「皆さんのお祈りに覚えていただければ幸いです」
鷹巣さんのトークの後、会衆が「地球のどこかで」という賛美歌を合唱し、地球の平和を求めつつ、「イエスさまを伝えよう。私たちにも何かできるはず」と歌った。
その後、藤澤さんが「憲法改悪を許さないバプテスト共同アクション」の「ひと言運動」について説明。「新聞を読んで思ったことや心配なこと、つぶやきなどを140字以内で同アクションへはがきに52円切手を貼って送ってほしい」と呼びかけた。
恵泉バプテスト教会で1980年代から活動しているバンド「アム・ハ・アレツ」によるミニ・コンサートも行われた。ウッドベースとアコースティックギター、ピアノ、オルガンまたはマンドリンによる伴奏で3曲が歌われた。
1曲目には、旧約聖書の十戒に基づいた「粘土の人形」が、オルガンの伴奏も加わって歌われた。2曲目には、1974年8月に美空ひばりが第1回広島平和音楽祭で初めて歌った「一本の鉛筆」が、ピアノのみの伴奏で歌われた。そして3曲目には、賛美歌「いのちのパン」がマンドリンを加えて演奏され、会衆とともに歌われた。
このミニ・コンサート終了後、参加者は全員で憲法第9条を一緒に朗読した。
会場からのトークとして5人の参加者が発言した。ある参加者が「憲法第9条で日本は守れるのか?」「我々は祈るとともにどういうふうに歩めばいいのか」と質問すると、別の参加者が「まずは一人ひとりがこの問題を考えることが大切。武力でなく国家間の話し合いを」と答えた。続いて、もう一人の参加者は、「十五年戦争で日本軍は日本国民を守ったか?戦争で命が失われている中、憲法9条は大事だ」と語った。
さらに、もう一人の参加者は、自らが行っている韓国人との交流を紹介した。そして最後に、別の参加者が、「自由民権運動によって大日本帝国憲法の草案がたくさん出された。その後、戦争を経て日本国憲法に結実した。そういう視点も必要だ」と語った。
次に、会衆が賛美歌「主はガリラヤへ」を合唱。そして、イザヤ書2章4節を引用して閉会の祈りが行われた。
その後、沖縄の米軍普天間基地の無条件即時返還及びオスプレイの活動停止、辺野古及び高江の基地建設計画の撤廃を求めて、オバマ大統領に沖縄の民意を伝えようと、沖縄人権協会や沖縄キリスト教協議会などが「平和な沖縄を望む市民の会」として実施している「オール沖縄2014年10万枚葉書キャンペーン」に参加するよう、呼びかけが行われた。
フェスティバルの参加者らの一部は、フェスティバルの閉会後、市民団体や労働組合・宗教者らによる「5.3憲法集会」のパレードに参加した。