世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事は、9日に韓国のソウルで行われた記者会見で、朝鮮半島の平和・和解と再統一に関する国際会議を2014年6月にジュネーブで開催すると発表した。
トゥヴェイト総幹事によると、この会議には、北朝鮮から朝鮮キリスト教徒連盟、韓国の諸教会や、朝鮮半島の平和と和解のための働きに責務を負っているエキュメニカルな協力団体の各代表者たちが招待されるという。これは昨年、釜山で開かれたWCC総会によって採択された、朝鮮半島の平和と再統一に関するWCC声明からの呼びかけに続くための新しい構想であるという。
WCC国際問題教会委員会(CCIA)の局長に新任されたピーター・プローブ氏は、WCCは、自らのネットワークの中で幅広い協力団体と協働し、それらの経験をこの取り組みにもたらすことで、朝鮮の人々の平和と統一を支援すると語った。
WCCが昨年11月8日、第10回総会で公的問題委員会の報告書の一部として採択した声明文は、新約聖書のエフェソの信徒への手紙2章14節を引用しつつ、「分断や戦争、そして苦しみは、いのちが満たされるようにという神の御心に反する」として、世界の諸教会および社会的、経済的、政治的権力を持つ人々に対し、朝鮮の人々を再統一し和解させる、永続的で持続可能な、正義を伴う平和を追求するよう呼びかけたもの。
しかし、釜山で行われた第10回総会に北朝鮮からの代表は参加しておらず、この声明文の採択にも関わっていない。
朝鮮半島では、朝鮮戦争(1950〜53)で1953年に休戦協定が結ばれた後、朝鮮戦争は国際法的に終結しておらず、60年以上にわたって北緯38度線を境に南北朝鮮の分断が続いている。この声明文は、北東アジアには世界で最も重大な軍事的・安全保障上の脅威が脱冷戦期においてもなお集中しており、核保有国が軍事基地を持ち、米・中・日・ロシアの新たな緊張が起きていると指摘した上で、和解と癒しの課題として、「休戦協定に代わる包括的な平和条約に向けた新たな過程を開始すべき時だ」と述べている。
また、この声明文は、「私たちの信仰と正義を伴う平和に対する責務」として、エフェソの信徒への手紙2章13節~19節、使徒言行録10章36節~40節、ヨハネの黙示録21章~22章を引用し、イエス・キリストへの信仰を告白している。
そして、同声明文は、「行動における信仰と希望」として、WCCは1948年の第1回総会とそれに続く朝鮮戦争以来、朝鮮分断の痛みを感じ、それが加盟教会や協力団体の間の緊張となってある程度反映されてきたと考えてきたとした上で、1989年のモスクワにおける中央委員会や、1991年のキャンベラ総会以降の歴史的な会議、そして1984年にCCIAの主催によって行われたYMCA東山荘(静岡県御殿場市)で朝鮮半島の再統一に関する会議をはじめとしたいわゆる「東山荘プロセス」などを通じて、朝鮮半島の平和と再統一のためにWCCが行ってきた取り組みを想起している。
さらに、この声明文は、WCCは「朝鮮半島の地政学的な文脈を根拠にエキュメニカル運動が新しい同伴と関与のあり方を発展させることができることを意識している」とし、「朝鮮半島が正義と満たされるいのちを伴う平和をいだくことができる希望の兆しや枠組みを見出す」と記述。その上で、エフェソの信徒への手紙2章14節を引用し、「これらのような希望や可能性によって教会は、神の支配を証明するものとして私たちを正義と平和へと導いてくださるという神の約束に応えて、朝鮮半島の平和と和解のために働くより大きな努力をなす動機を与えられるのだとした。
一方、同声明文は、「癒しと和解、そして平和への道」として、朝鮮半島の平和条約に向けた過程が朝鮮半島と北東アジア地域全体にとって極めて重大であり、その条約が休戦協定の締約国と関連諸国によって議論されなければならないと述べている。そして、朝鮮戦争の終結宣言は同協定の終結を加速化させ、相互信頼と信頼醸成に貢献するとし、南北朝鮮と米中は和平フォーラムを開くという6か国協議の約束を確実に守るよう強く求めるとともに、米国と日本は北朝鮮に対する封鎖と制裁を課すことを止め、中国は6か国協議を含む対話を再開させるために進行役として行動すべきであるとしている。
さらに、同声明文は、北朝鮮と他の国々の経済的な交換の機会を再開しなければならず、それによって効果的な経済協力の新たな道が開かれるとするとともに、国連は朝鮮半島全体にわたる平和構築のための努力を開始するとともに既存の経済・金融制裁を解除すべきだとしている。
そして、WCCが、1)勇気・気遣い・コミュニケーション・告白・和解そして責務という東山荘プロセスの精神を具体化すること、2)8月15日の前の日曜日を「朝鮮半島の平和的再統一のための祈祷日」と定めることによって、朝鮮の各民族と諸教会とともに祈ること、3)南北朝鮮双方の若い世代のために幅広いエキュメニカルな討論の場を設け、朝鮮半島の望ましい未来を共に展望すること、4)平和を作る者および架け橋を造る者として南北朝鮮の諸教会への連帯の訪問を企画すること。最初の訪問は2014年に、歴史的な東山荘国際会議30周年を記念して企画することができる、5)和解と平和に向けて前進すべく、南北双方の教会とクリスチャンが共に会うための共通の討論の場を設けることによって、朝鮮の教会との同伴を続ける。そのような構想にとって歴史的に象徴的な時は、朝鮮解放70周年の2015年に見出すことができると認識する、という責務を担うよう勧告した。
さらに、この声明文は、行動を起こす責務として、1)朝鮮半島全体にわたる平和構築のための新しい取り組みを始める権限を国際連合安全保障理事会に与えるよう、そして朝鮮民主主義人民共和国に課された既存の経済・金融制裁を解除するよう、自国の政府とともに活動すること、2)1953年の休戦協定を平和条約に替えるための全世界的な運動に乗り出すこと、3)この地域の全ての諸外国に対し、朝鮮半島に関するすべての軍事演習を止め、介入を止めて、軍事費を削減することによって、朝鮮半島の平和構築のための創造的な過程に参加するよう、呼びかけること、4)いのちが核の危険によって脅威にさらされることが地球上のどこでももうないように、核のない世界を確立するための手段を講じると同時に、世界のすべての地域における核兵器の人道的禁止のために台頭しつつある国際合意に加わることによって、北東アジアにおける全ての核兵器と原発の完全で検証可能かつ後戻りできない除去を確実にすること、5)不正義と対立を克服することによって、正義と人間の尊厳を伴う人間共同体を取り戻すよう、そして離散家族の人道的問題に緊急に取り組むことによって、家族の居場所の確認や文通と訪問の自由なやり取りを認める持続可能な過程を確立することによって、そして必要に応じて国際機関の支援を提供することによって、人間共同体を癒すよう、南北双方の各政府に強く求めること、6)朝鮮民主主義人民共和国の政府と大韓民国の各政府とともに活動し、真の非武装地帯(DMZ)を維持してそれを平和地帯に変えるための国際協力をもたらすこと、を挙げている。