昨年12月に成立した特定秘密保護法について、特定秘密の指定や解除の基準を話し合う有識者による会議「情報保全諮問会議」の初会合が17日、首相官邸で開かれた。行政機関の長が特定秘密指定の権限を乱用することがないよう同法の基準などを議論することを目的とした同会議だが、同会議での議論の内容については議事録は作成するものの、議事録の全文は公開せず、また発言者の名前についても明記しない形で公表することが決まった。
同会議は、座長を読売新聞グループ本社会長の渡辺恒雄氏が務め、米国の秘密保護法制や行政法、情報公開法などの専門家7人で構成されている。今回議事録全文の非公開が決まったのは、機密性の高い事柄を議論する場合があるためだという。しかし、同会議の議事録全文の非公開が決まったことで、「あっさり非公開が決まった。国にとって都合の悪い情報が特定秘密に指定されるとの批判が強い中、外部有識者の議論さえ『秘密』にされる」(東京新聞)、「議事要旨は公開するというが、その判断は疑問だ」(毎日新聞)などと、厳しい声が出ている。
また、東京新聞、北海道新聞などは、同会議の7人のメンバーの内大半が同法の容認派であることを指摘している。初会合で、座長の渡辺氏は「不必要に拡大解釈して言論、報道の自由を抑制することがあってはならない」(毎日新聞)と語っているが、「多少の条件はあるが賛成だ」(東京新聞)と言う立場だ。北海道新聞は、読売新聞は「社説で秘密保護法の問題点を指摘しつつも、米国などと連携するためには『欠かせない法制度だ』と訴えてきた」と指摘している。
一方、同会議の実務を行う主査の永野秀雄・法政大学教授は会合後、記者団の取材に応じ、これまで日本の外交に関する重要な文書がアメリカで先に公開されてしまうケースが少なくなかったとし、「歴史上、重要な事実をアメリカで初めて知るのではなく、わが国でも開示するべきだと常々考えてきた」(NHK)と述べ、秘密を将来開示する仕組みについても積極的に議論していく方向性を示した。
同会議は、政府外の者が公式に意見を言うことができる唯一の機関。首相から毎年秘密保護法の運用状況についての報告を受けるが、特定秘密の中身までは検証することはできない。そのため、「チェック機能に限界があるとの指摘もある」(日本経済新聞)が、「個々の特定秘密の中身に踏み込めないが、役割は小さくない」(毎日新聞)機関だ。
今後、政府は今秋までに特定秘密の基準や関連政令を閣議決定する方針。同法は、延期がなければ、昨年12月の成立から1年以内に施行される予定だ。