二兎を追う
あなたは、「あれもやらなければ、これもやらなければ」と思い悩んでいませんか。今の複雑な社会に生きる者として、私たちはいろいろなことに気を配って、適切に対応していかなければなりません。
しかも、何事にもスピードが要求される時代です。めまぐるしい現代のさまざまな動きに同調していかなければ、周囲から取り残されてしまうだけでなく、ほかの人たちに迷惑をかけることになりかねません。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」という格言があります。すばしこい二匹の兎を同時に捕らえようと追いかけても、一匹も捕らえることができません。
しかし、あなたは二兎どころか、三兎も四兎も捕らえようとして走り回ってはいませんか。
皿回しの揚げ句の果てに
「仕事も家庭も信仰も健康も、みんなガタガタです。まじめに一生懸命やってきたのに、一体どうしてなんでしょうか?」
病気で入院中の方から、こう質問されました。彼は学生時代にイエスを信じました。以後、教会の若手リーダーとして熱心に奉仕してきました。クリスチャンの女性と結婚し、三人の子供にも恵まれ、家族を大切にしてきました。
また、高校、大学のサッカー部で鍛えた頑健な体でバリバリ仕事をし、会社でも抜群の成績を上げていました。ウイークデーは意欲的に仕事をし、土曜日は家庭サービスに徹し、日曜日は家族と共に教会生活を楽しんでいました。まさに、クリスチャン・ファミリーの理想の姿です。
ところが、有能であるがゆえに、会社での責任がますます重くなり、土日に出勤しても追いつかない状況になってきました。子供たちが成長するにつれ、家庭でもさまざまな問題が起きてきます。その上、拡大しつつある教会からは、それまで以上の奉仕を期待されるようになってきたのです。
気力と体力に限界を感じた彼は、ノイローゼ気味になってしまいました。会社の責任を少し軽くしてもらい、家族にも我慢してもらうことにしました。また、当分の間教会での奉仕を断り、礼拝だけに出席することにしました。
しかし、その結果生じたことは、不満、不満、不満の連鎖反応でした。能力があるのに期待した仕事をしないという会社からの不満、あまり子育てを手伝ってくれないという家族からの不満、奉仕をサボって楽しているのではないかという教会からの不満です。
さらに、周囲の一方的な期待と要求に対する彼の側の不満と、それに対応できない自分自身への不満とが大きく募ってきました。そのうち、言うことを聞かない子供たちを殴るようになったり、不満だらけの妻と毎晩口論が続き、離婚話にまで発展してきました。睡眠不足で仕事をしているためミスが目立つようになり、社内で異例の降格処分まで受けてしまいました。
「要求ばかりする教会にはもう行きたくない!」と、日曜日の礼拝にも欠席するようになりました。そして度重なるストレスで重症の胃かいようを患い、医師から長期入院を命じられたのです。
私たちは四つも五つも棒の上に「問題というお皿」を乗せて回しているのです。状況が良ければ、上手にお皿を回し続けることができるでしょう。でも、ちょっと状況が悪くなるとバランスが崩れ、お皿が全部落ちてしまうのです。
第一に優先すべきことをする
「あなたは多くのことに心を配って思いわずらっている。しかし、無くてならぬものは多くはない。いや、一つだけである」とイエスは言われました。なにはともあれ、神の語ることばを聞きなさいということです。
「まず神の国と神の義とを第一に求めなさい。そうすればこれらのものは、すべて添えて与えられるであろう」とイエスは言われました。「神の国」とはイエスのことです。万物の創造主、すべてを支配しておられる「王の王なるイエス」を第一に求めるのです。「神の義」というのもイエスご自身のことです。すべてにおいて正しい「義の義なるイエス」を第一に求めるのです。
王の王なるイエスを心から信じ、義の義なるイエスと霊的に一体化すれば、すべてを支配しておられる全能の父なる神が、私たちのすべての必要を満たしてくださるのです。
要するに、「イエスとあなたとの生き生きとした関係を深め、イエスとあなたとの命のつながりを強めていくことだけが、本当に大切な唯一のことなのだ」ということです。そうすれば、あなたの生活の一切の必要は父なる神が面倒を見てくださいます。ですから、どんなことも心配しなくてよいのです。頑張って自分の力でたくさんのお皿を回し続ける必要はありません。神がすべてのお皿をちゃんと回してくださるからです。
「神、家族、教会、社会、仕事、という聖書的優先順位を守りなさい」とよく言われます。しかし、そのような外形的優先順位は、守ろうとしても守れるものではありません。絶えず神に祈り、絶えず神のことばに浸り、イエスの十字架と復活の絶大なる愛を体験することだけに集中していけばよいのです。
そうすれば、その都度与えられる状況があなたにとって最高であり、最善であることがわかってきます。失敗や悲劇と思えることが一時的に起きるかもしれません。しかし、それらもことごとく、神の限りない愛の摂理の中であなたのプラスになっていくのです。
「すべてを失っても、イエス・キリストとの豊かな交わりがあればそれで十分なのだ、ということがようやくわかりました」
入院中の彼から喜びの手紙を受け取りました。病院で毎日聖書を読み、ひたすら救いを求めてイエスと心の会話を続けた結果です。健康が回復した彼は、今では会社にも家庭にも教会にも復帰しました。
イエスとの心の会話を日々、第一優先にしています。そして、神の絶妙なバランスによって、これまで以上に各方面で精力的に活動しています。
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佐々木満男(ささき・みつお)
国際弁護士。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。インターナショナルVIPクラブ(東京大学)顧問、ラブ・クリエーション(創造科学普及運動)会長。
■外部リンク:【ブログ】アブラハムささきの「ドントウォリー!」