―「恐れてはならない、わたしはあたたと共にいる。驚いてはならない、わたしはあなたの神である。わたしはあなたを助け、あなたを強くし、わたしの勝利の右の手をもって、あなたをささえる」(イザヤ書41章10節)
立ちはだかる壁
「今日まで一生懸命頑張ってきました。でも、もうだめです。障害児を持つ母親が障害者になることが、神さまのみこころなのでしょうか……」。知人のHさんからこう聞かれ、絶句してしまいました。
幼児期に髄膜炎を患い、後遺症で体がまひした娘のマリナちゃん。何とか健康になってほしいと、Hさんは15年(当時)の間、毎日治療とリハビリ訓練に明け暮れてきました。
夫と二人の息子、長女の協力もありましたが、マリナちゃんの日常生活のほとんどはHさんの肩にかかっていました。体が大きくなったマリナちゃんをケアするには相当な体力が要ります。
ところが、Hさんの股関節の軟骨がもろくなり、激痛のために歩くことも非常に困難になってきたのです。「人工関節にするのが普通ですが、いろいろな問題があります。それよりも、股関節の骨を切る手術をして根本的に治すのがいちばんです。大手術ですから、成功するかどうかはやってみないとわかりませんが、私に任せてください」。権威ある専門医からこう宣告されました。
「そんな大手術に耐えられるだろうか、もし失敗すれば一生車いすの生活になってしまう。この子の面倒はだれが見るのだろうか」。さまざまな不安と恐れから、Hさんは絶望的な気持ちになっていました。これまでたくさんの壁を乗り越えてきた彼女ですが、今度ばかりは精根尽き果ててしまったのです。
「そんなはずはありませんよ。神のみこころは、Hさんが健康を回復してマリナちゃんもいつか完全にいやされることだと思います。お祈りしています」と返事をしました。そんな時、友人から彼女に毛筆の手紙が届きました。「痛みも苦しみをも雄々しく忍び耐えよ。主イエスの共にませば、耐え得ぬ悩みはなし」と力強くしたためられていました。
「そうだ、イエスさまと一緒なんだ!」と心から感動したHさんは、勇気を出して大手術の壁に立ち向ったのです。結果は、医師も驚くほどの大成功でした。こうしてHさんはこれまで以上に丈夫になり、元気にマリナちゃんの世話を続けています。
記録は破られるためにある
今、あなたの前に立ちはだかっている壁は何でしょうか。夫婦の不和でしょうか。子供の問題でしょうか。職場のトラブルでしょうか。仕事の失敗でしょうか。経済の問題でしょうか。病気の苦しみでしょうか。いずれにしても、私たちはいつも何かの壁に阻まれ、行き詰まります。でも、それはあなたが生きている証拠です。前進している証拠なのです。
「芸術はいつもゆきづまっている。ゆきづまっているからこそ、ひらける!」。こう言って日本に前衛芸術を切り開いてきたのは、岡本太郎氏です。大阪万博のシンボル「太陽の塔」で国際的話題を集めた岡本太郎氏は、「壁は自分自身だ!」と、いつも体当たりで「自分の芸術」という壁を乗り越えてきました。
あなたの人生は、百メートルを一気に駆け抜ける「短距離走」ではありません。平坦な道を自分のペースで走り続ける「マラソン」でもありません。あなたの人生は、山あり谷ありの「長距離障害物競走」なのです。目の前に現れる障害物の壁を一つ一つ乗り越え、ゴールに向かって走り続けるのです。壁を一つ乗り越えるたびに、あなたはより強くなり、雄々しく成長していきます。あなたの心は熱く燃え、もっと大きな壁にチャレンジしていこうという勇気が湧いてきます。
人間の一つの細胞の中にある遺伝子(DNA)の情報量は30億といわれています。ところが、その97パーセントは使われずに眠っているのです。眠っているDNA情報(潜在能力)を活性化してくれるのが、あなたの目の前に立ちはだかる障害物です。
「記録は破られるためにある」といわれるように、スポーツその他の最高記録は次々に破られてきました。「最高記録」という大きな壁に勇敢に立ち向かった人たちが、それを見事に乗り越え、「新記録」を打ち立ててきたからです。
障害の壁が愛の詩になる
マリナちゃん大好き!
って言うと
言葉を返せないあなたは
満面のほほ笑みを返してくれる
その笑顔に誘われて
すぐ また言ってみたくなる
マリナちゃん大好き!
マリナちゃん大好き!
マリナちゃん大好きよ!
マリナちゃんを育てる中で味わってきた、苦しい思いや喜びの感動を、Hさんはいつからか詩にするようになりました。マリナちゃんと共にさまざまな壁を乗り越えて生きる日常生活の一こま一こまが、神の愛と恵みに満ちて輝いている。心の中でそれが見えてきたのです。Hさんの詩はいろいろな雑誌に掲載され、多くの読者に感動を呼び起こしました。それらが一冊の詩集として出版されました。
あなたは決して独りぼっちではありません。あなたを愛するイエスと共に二人三脚で走っているのです。イエスと共に、次から次へと目の前の壁を乗り越え、勝利から勝利へ、栄光から栄光へと、天国へ向かって走り続けているのです。
壁は乗り越えられるためにあるのです。
◇
佐々木満男(ささき・みつお)
国際弁護士。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。インターナショナルVIPクラブ(東京大学)顧問、ラブ・クリエーション(創造科学普及運動)会長。
■外部リンク:【ブログ】アブラハムささきの「ドントウォリー!」