TBSのニュース番組「News23」(午後10時54分〜)は6日、学校では定説とされているダーウィンの進化論をめぐって、米国カンザス州教育委員会の保守派が、進化論以外の理論も教えるべきと主張、同委周辺で論争が起こっていると伝えた。
番組では、進化論教育の反対派と擁護派それぞれの意見を紹介。「進化論は証拠もデータもなく、誇張されたもの。私たちは進化論を正直に、率直にとらえようとしているだけ」と主張する進化論教育反対派のカルバート弁護士に対し、擁護派のイリゴネガライ弁護士は「これは科学の議論ではない」「この動きはインテリジェント・デザイン(ID)を広げるために利用されているのに過ぎない」と、論争自体が無意味と反論する。
教育委の保守派は1999年に、進化論について言及している部分を教科書から削除する決定を下したことがあったが、行き過ぎとの反発が進化論擁護派からあり、教科書は元の内容に戻された。
番組の中で、IDは、「全ての生物は『高度な知的存在』によってデザインされたとする理論」と定義され、「創造論の表現を変えたもの」と紹介されるにとどまった。その上で、「人間は神によって創られたとする創造論を全面的に押し出せば、政教分離を定める憲法に抵触する」と説明、創造論とIDをほぼ同一視した上で論争を紹介した。
だが、進化論教育の見直しを求める同委保守派は、進化論教育の中止を求めているわけではない。番組では、保守派メンバーのエーブラハム同委議長が「IDを支持しているわけではない。もしIDが科学の基準になるのならば、私は支持しない」と述べ、生徒に多様な見方を教える教育機関の価値を強調した。
進化論教育をめぐる論争はキリスト教保守派が多く住む、他の州にも広がっていることから、番組は、ブッシュ大統領の再選でキリスト教保守派が威力を示し「自分たちの利益を追求している」と分析する調査機関関係者の話を紹介した。
番組によれば、カンザス州で行われていた公聴会は、科学と宗教は全く違うもので、議論自体がナンセンスだとする進化論側の証人のボイコットによって閉幕した。同委が最終判断を下すのは7月という。
同番組キャスターの筑紫哲也氏は、「創造論と進化論を一緒に(教える)とは。天動説と地動説を一緒に教えるといっても・・・」とコメントした。
IDは、19世紀の神学者ウィリアム・ペイリーが提唱したとされている。ペイリーは、正確に時を刻む精巧な懐中時計から時計職人の存在が連想されるように、自然界の秩序と複雑性から宇宙創造主の存在を連想せずにいられないと主張した。ペイリーの言及する「創造主」はキリスト教の神とする見方が支配的で、ID擁護派のほぼ全員がキリスト教徒か有神論者。
創造論は、神が全宇宙と人類を6日間で創造したとする信仰または説で、旧約聖書の創世記に記述されている。創世記を逐語的に受け入れる創造論者が地球の年齢を1万歳以下と主張する一方で、聖書と現代の科学研究を融合させ、創世記の1日は24時間ではなく、「ある一定の期間」を意味している可能性を指摘する創造論者もいる。
IDは地球の年齢について独自の推測や反論をしない。創造論者は一般的に、人類は他の生物から進化せず、神によって直接創造されたと主張する。IDは、人類が時間を経て他の生物から進化したことを否定せず、進化の過程に神の介入と意志があったと主張する。