第26回関東聖化大会3日目の18日に行われた女性大会において、カニンガム博士による「ホーリネスと女性」と題された講演が行われた。また東戸塚エルシオン教会牧師の藤冨明子氏が同大会で証詞を行った。
キリスト教の宣教において、文化的社会的慣習に倣って女性の活躍が影に追いやられてしまうようなことがこれまでのキリスト教宣教の歴史の中で生じてきたが、カニンガム博士は同講演において、聖書の御言葉、またホーリネス教会の歴史の中で、確かに女性たちが宣教の上で男性と同等に中心的な役割を果たす権利があり、またそのような活動がなされてきたことを証しした。
カニンガム博士はガラテヤ書3章26節~29節を引用し、キリストにあって召された者の中には「ユダヤ人もギリシヤ人もなく、奴隷も自由人もなく、男子も女子もない」ことを改めて確認し、キリスト教がこれまで抑圧されてきた人々に対して「解放」をもたらす宗教であることを説明した。
特に女性は聖霊の働きに非常に敏感であり、これまでの歴史の中でもホーリネス運動において指導的な役割を果たしてきたことを証しした。ホーリネス運動においては、歴史的に見ても女性たちがその宣教の働きに主体的に関わり、社会に直面する様々な問題への解決を目指していった。
~女性が必要とするメッセージ~
カニンガム博士は、キリスト教の説教を聞く場合、女性が注意して聞かなければならない御言葉は、男性が注意して聞かなければならない御言葉とは異なっていることを指摘した。現代のホーリネス運動においても、女性の霊的必要に焦点を当てたメッセージが成される必要があるという。
キリスト教の福音の教えは、本来「世の中の既存の権力体制の下の秩序をひっくり返し、最も小さな者が偉大となり、後のものが先になる」教えであり、心の貧しい者が幸いであり、天の御国が彼らに属するという逆説の真理を説いている。
カニンガム博士は、女性であっても「神様と私たちの間に立つのは、キリストのみである(ガラテヤ3・28)」ことを強調した。なお新約聖書の御言葉の中には、女性が教会の中で語ることを禁じる御言葉も含まれている。一方でガラテヤ人の手紙3章では「男子も女子もない」と書かれてあり、すべての人間が平等であることが語られている。このことについて同氏は「パウロ使徒の書簡の中には、ある特定の時代背景の中で適応される倫理と、すべての時代の人に当てはまる倫理の部分があります」と説明した。ガラテヤ人の手紙ではある特定の時代背景の中で適応される倫理ではなく、目標とするべき所の倫理が書かれてあり、「目的論的である」と述べた。
そのため、かつて教会では女性に牧師按手を授けることが受け入れられないような習慣があったが、これはその時代の社会・文化に信仰が妥協した結果であり、本来の御言葉からすれば女性が牧師按手を受けることはまったく問題がないことであることが改めて確認された。カニンガム博士は歴史学の視点から、「それぞれの地域・文化に適応する倫理というものがありますが、それとは別に全ての時代に全ての人に適応されるべき、われわれの目標とされるべき倫理も存在しています」と説明した。
ホーリネス運動で活躍した女性として、19世紀米国のホーリネス運動で影響を与えたフィービー・パーマー、20世紀に著書「愛の神学―ウェスレアンの原動力」でホーリネスの学者らに影響を与えた神学者ミルドレッド・ワインクープが紹介された。「火曜日会議」で知られるフィービー・パーマーは、教会での女性の教職や全きキリスト者としての教義を促進する書物の執筆や、「ホーリネスへの案内」という月刊雑誌の編集を行うなど、全米のホーリネス運動に大きな影響を与えた人物のひとりと見なされている。
カニンガム博士は、男性と女性の陥りがちな罪が異なることについても指摘し、男性はプライドを通して自身の存在について実際以上に価値がある存在であると評価したり、自分が喜ぶことを求めるなど、プライドという偶像礼拝の罪に陥りがちであり、女性よりも男性の方がプライドや肉的欲求という問題について多く抱えているため、プライドを戒めるメッセージは聴衆が男性の場合はそれが適合するが、女性の場合は的外れとなってしまう事があると指摘した。
同氏によると、一般に女性が抱えている問題、御言葉から得るべき必要は、男性の抱えているものとは逆のものであるという。女性は家庭での伝統的な役割や社会の欲求から、自分の夫であったり、子どもや親であったり自身よりも他人のために犠牲を払う生き方をすることが多い。その中にはイエス・キリストがご自身を罪人のために捧げられたようなイメージもあるが、ときとして家庭のために行きすぎた自己犠牲に陥ってしまうことがあるという。そこにある問題は、プライドの問題ではなく、女性が家族に仕えていくという中で、自分に対する価値を低く見てしまうという傾向があることが女性特有の問題ではないかと指摘した。
~心の中にある偶像を砕く~
家庭のことを優先にしすぎるため、自身がどういう存在であるかをはっきりと把握できずにおり、自分が本当に価値ある存在であるという確信が持てないでいるという問題があるという。しかし、信仰による全き清めを経験するときに、この様な心の中にある偶像が壊され、聖霊による力を受けるようになるという。このような家庭のために奉仕する女性たちは、いつも自分の評価や価値を求めようとするプライドに関して戒めるメッセージを聞くよりも、自分を価値ある存在であり、聖霊が下る時に本当の力を受けることができるというメッセージを受けることが非常に大切であるという。
女性が聖霊によって力を受けることで、女性にとって新しい可能性をもたらすのであり、また聖霊によって力を受けるというのは神様が信じる女性に与えておられる命令でもあると強調した。初代教会でもペテロ使徒が聖霊によって力を受けた様に、多くの女性たちも聖霊によって力を受けた。男性であろうと女性であろうと、自分自身と主なるキリストの間にいかなるものも割り込んではならず、イエス・キリストが私の主であるという事に対して競合する存在があってはならないという。もしそのような存在があるとすれば、それは偶像崇拝となるという。そのため神様に忠実に仕えるのであれば、心にある偶像はすべて打ち砕かれなければならず、ホーリネスを求めるという神様からの命令というのは、絶対的に主に従っていくという命令であり、イエス・キリストの主権にいつも喜んで従える心をもつことが大切であるという。
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フロイド・カニンガム博士 略歴
1954年9月22日米国に生まれる。イースト・ナザレン・カレッジ、ナザレン・セオロジカル・セミナリー、ジョン・ホプキンス大学で学び、フィリピンにあるアジア・パシフィック・ナザレン・セオロジカル・セミナリー(Asia Pacific Nazarene Theological Seminary)の第5代学長となる。
APNTSは、ナザレン教団が、アジア地域において、米国と同水準のウェスレアン神学の真髄を教育し、アジアをはじめ世界への架け橋となるリーダー・人材の養成を目指している神学校で、カニンガム博士は1983年の創設当初から現在まで教授として奉仕してきた。専攻は歴史であるが、神学や宣教などの分野でもコースを教え、フィリピンの地域教会での牧会経験も有する。
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