米オバマ政権は7月31日、米政府の「債務上限引き上げ」で政府与党と野党共和党の間で合意に達したことを発表した。また今月5日には米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が米国の長期信用格付けの引き下げを発表し、米経済に対する投資家の不安を高め、金融市場に不安を誘発させた。米社会では少数派コミュニティや貧困層に伸し掛かる負の影響の懸念が高まっている。
米社会の16パーセントを占めるヒスパニック・コミュニティでは金融市場の混乱や米経済悪化が懸念される中にあって、2012年米大統領選でよりキリスト教的価値観が強められる政策や指針を取ることができる政党へ支持を行いたいという意向が見られている。
米ヒスパニック・コミュニティの福音主義運動の指導的存在と言われているサムエル・ロドリゲツ牧師は米クリスチャン・ポスト(CP)紙に対し、米政府の「債務上限引き上げ」合意に関して「ヒスパニック・コミュニティが大きな犠牲を強いられざるを得なくなるでしょう。米政府の膨大な債務を削減するためには全国民が犠牲しなければならないでしょう。全国民がそれぞれの役割を果たさなければなりません」と述べた。
ロドリゲツ氏は先月オバマ米大統領と、米経済危機およびそのキリスト教価値観や貧困問題に対する影響について話し合った。その結果同氏は「より健全な経済にしていくためには多くの痛みを伴う犠牲が必要になるだろう」と警告するに至った。
米経済が悪化する中、ヒスパニッククリスチャンの指導的立場にある同氏は特に社会的少数派に置かれているヒスパニック・コミュニティに対する影響に懸念を示している。同氏は「債務上限引き上げ」合意による良い点としては税収を引き上げなくとも多くの雇用を創出する企業家を財政的に支援することができる点を挙げた。しかしながら一方で「債務上限引き上げ」によって貧困者・ホームレスおよび高齢者に対する積極的な支援については弱まらざるをえないだろうとの懸念も示した。
米一般国民の間で深刻となる貧困や失業問題について、ロドリゲツ氏は「ヒスパニック・コミュニティは経済危機で他の少数派コミュニティよりもさらに深刻に今回の影響を懸念しています。失業と貧困問題は米国内ヒスパニック・コミュニティの中でさらに深刻になっています。ヒスパニック・コミュニティがもっとも大きな負の影響を受けているといえるでしょう。私たちは経済危機の解決方法を模索しなければなりませんし、キリスト教徒として貧困者を救うために献身していかなければなりません」と述べた。
米国内のヒスパニック人口は現在全米人口3億870万人中5千万50万人(約16パ-セント)も存在しており、2012年大統領選においてもこれらの人々の投票が無視できない存在となっている。
ロドリゲツ氏によると、2012年大統領選でヒスパニックの人たちが第一に関心を寄せるのは経済問題であるという。しかしながら、先月同意に至った「債務引き上げ」についてはヒスパニックの投票に直接的な負の影響を与えることはないだろうとし、「私はヒスパニック・コミュニティは民主党・共和党両方に経済危機の責任があると考えていると信じています。そしてラテン民族は開かれたマインドを有しており、全ての人が同じく責任があると認識できる人たちであると信じています」と述べた。その上で2012年大統領選でヒスパニックの投票を獲得するためには「経済危機に対する具体的な解決策を導き出し、キリスト教の価値観を重視し、移民制度改革を進めていける政党がヒスパニックの支持を得るでしょう」と述べた。