その後同氏は自身のラジオ局「ファミリーラジオ」の番組に出演し、「愛と慈愛に満ちた神は災難によって人間を罰する計画を中止した」と説明し、終わりの日は以前から予告していた通りの10月21日に到来すると告げた。
20世紀にプラグマティズム(実用主義)が行き渡り、日本・米国など先進国において神学に対する注目度が薄れていることが懸念される。信仰における正統に関する定義があやふやになると、そこに付け込んで偽預言者や聖書の教えに異なった人間的な解釈を行う「偽教師」が生じ、信仰を志す人々の間に混乱を与えることが懸念される。
ハロルド・キャンピング氏の予言に対して、米サウスウエスタンバプテスト神学校副学長のクレイグ・ブレイジング氏は、同氏の予言において、終末に伴い生じる地獄に関する聖書の預言が削除されていることから、同氏の予言は間違いであると指摘した。
ブレイジング氏は「終末というのは救われていない人々に対する地獄への裁きが伴うものです」と述べた。地獄の存在について懐疑的な人々に対して、同氏は「聖書にはキリストを信じない人たちに対する物理的・霊的な終末に関して記述されています」と述べた。
ヨハネの黙示録20章には「獣や像を拝まないで、その額や手に獣の刻印を押されなかった人たちがキリストとともに、千年の間王となり、その他の死者は千年の終わるまでは生き返らない。これが第一の復活であり、千年の終わりに御使いが底知れぬ所に投げ込んでいたサタンが牢から解放され、地の四方にある諸国の民を惑わすために出ていく」と書かれている。その後さばきがあり、死とハデスとが火の池に投げ込まれる「第2の死」が来ることが書かれている。
これに対し、キャンピング氏の10月21日に終末が来るとの予言では、クリスチャンとノンクリスチャンの間で死後その魂が天国へ行くのか、地獄へ行くのかについては明確な相違が示されていない。ブレイジング氏は、キャンピング氏が、終末を予言しておきながら明確な地獄について示せないのであれば、天国の存在も同氏が指摘した日に来ることは無いと指摘し、「終末には地獄へ行く裁きがあり、地獄があるからこそ永遠の天の御国が出来上がるようになるのです」と述べた。
5月21日に終末が来ると予言していたキャンピング氏を信じる人々の中には、21日に合わせて仕事を辞め、天に召される喜びを味わう前に金銭を使い果たす人々も生じた。ノンクリスチャンの間でも動揺が広まり、母子共に終末の裁きを前に心中を試みたり、14才のロシア人の少女が終末を恐れて自殺しようとする騒ぎも生じたという。
その後キャンピング氏は、5月21日は物理的な終末ではなく、精神的な終末であったと主張した。同氏は終末は2011年10月21日に来ると現在主張している。
ブレイジング氏は、キャンピング氏の主張の神学的過ちは、地獄の解釈にあると指摘する。キャンピング氏は、「神様は愛と憐れみに満ちており、情け深いお方である」とし、「一度死ねば、死ぬだけです」と述べ地獄は無いと主張している。
ブレイジング氏は神は善の神であるからこそ地獄が存在するのだと指摘、「もし神様が善の神であるのであれば、地獄は存在しなければなりません。なぜなら神の裁きは悪が罰されることを要求しておられるからです。神様が善なる行いを守り、悪を罰するお方であるからこそ世界に終末が到来するまでの時間が与えられているのです」と述べている。
ブレイジング氏はキャンピング氏の予言について、終末の日を予言しているものの、地獄については何も定まったことを述べていないため、偽預言者であると指摘した。キャンピング氏は聖書の真実性も否定した見解をもっている。
これまでも終末が来ると予言する偽預言者が世界で度々生じているが、そのような偽預言者は間違った予言を何度も行う傾向がある。ブレイジング氏は「聖書では、真実の預言者は間違ったことを預言しないことを私たちに教えています」と述べ、偽預言者の予言に動じないように促している。