ローマ・カトリック・アングリカン国際委員会(ARCIC)が現地時間19日、英国ロンドンの聖公会ウェストミンスター寺院で、声明「マリア:キリストにある恩寵と希望」(別名『シアトル声明』)を発表した。
声明は、世界のローマ・カトリック教会と世界聖公会(アングリカン・コミュニオン)が教義上のマリアの地位に関する共同理解をまとめたもの。両教会の一致に向けた大きな一歩との認識が支配的で、マリアの無原罪懐胎論をめぐって分裂(1854年)した両教会の溝を埋める歴史的声明と評されている。
だが、聖公会福音派の聖職者たちは、声明に綴られたマリア論を容認しない構えだ。マリアが母の胎内に宿った瞬間から原罪を免れていたと主張する無原罪懐胎論、マリアが霊魂と肉体とともに昇天したと主張するマリア被昇天論は、新約聖書に記述がなく「聖書的根拠がない」と指摘する。
AFP通信によると、英国国教会(英国内の聖公会)の福音派の群れに属する聖職者は「マリアを祈りの対象とすることは、天の御父と私たちとの間をとりなす大祭司、イエスキリストに背く行為」と指弾した。
国際エキュメニカル情報(ENI)によると、同じ群れに属するロッド・トーマス牧師は「神学をうやむやにすれば(教会の)一致は実現し得ない」と指摘する。
声明を朗読した同寺院のニコラス・サゴフスキー参事司祭は、声明を「5年に及ぶ作業の実り」と評価すると同時に、マリア関連緒論が今後、聖公会の礼典に分裂をもたらす不安材料になる神学的理由はないと語った。
同日付の英国国教会新聞は、二教会が声明で合意に至った場合、運営体制や権威構造に大きな変化が起こる可能性があると報じた。同紙は「ローマ・カトリック教会は、回復を遂げた共同体内で、諸教会が特定の教義に対して異なる見解を持つことを想定していない」と伝えた。
二教会が合併した場合、聖公会側に神学的な選択肢が与えられないと懸念する声も多い。