東京都立の高校や養護学校などの教職員が都教委などを相手に、入学式や卒業式で日の丸に向かっての起立や君が代の斉唱を強要するのは不当だとして、起立や斉唱義務がないことの確認などを求めた裁判で、東京地裁は21日、違反者を処分するとした都教委の通達や職務命令は「少数者の思想・良心の自由を侵害する」として違憲・違法とする判決を出した。憲法19条が保障する思想・良心の自由の侵害を明確に認めた判決は今回が初めて。
都教委が03年10月、各校長あてに出した問題の通達では、教職員が国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること、違反すれば停職を含む懲戒処分の対象とする、などが定められていた。
この通達について判決は、「教育の自主性を侵害し、一方的な理論や観念を生徒に教え込むことに等しい」と指摘。「教育は不当な支配に服してはならない」と定めた教育基本法10条に違反することを明確に認めた。
日の丸掲揚と君が代斉唱を巡っては、これまでに、文部科学省が都道府県と政令指定都市の教委に「徹底」を求める通知を出し、実施率も調査。03年春の卒業式では、公立の小中高すべてで日の丸掲揚率が100%になった。それと時を合わせるように、教職員への処分も増加。文科省によると、00年から04年度に停職や減給、戒告などの懲戒処分や、懲戒に至らない訓告などの処分を受けたのは、のべ862人。うち懲戒処分は471人で、中でも東京都が301人(全体の64%)と群を抜いている。
判決は、「国家斉唱を拒否し、異なる世界観を持つ者に不快感を与えることがあるとしても、不快感で基本的人権を制約することは許されない」「憲法は相反する世界観や主義・主張に相互理解を求めている」とし、憲法が保障する思想・良心の自由をもっと尊重すべきであると判示した。
これまで、内外からの強い反発に耐え忍び、「日の丸・君が代」強制に強く反対してきたキリスト者を始めとする国民の小さな声が、強権による教育行政の容認の姿勢を崩すことがなかった司法の流れを、今大きく変えようとしている。