「外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会」(外キ協)は1月19〜21日、広島で第20回全国協議会を開催した。主題は「宣教課題としての外国人住民基本法」、副題に「戦争と排外の時代に『外国人住民基本法』制定運動を展望する」とした。協議会には、外キ協に加盟する12の教派・団体と9地域の外キ連、そして韓国基督教教会協議会の代表者ら45人が参加した。
19日、中江洋一牧師(在日大韓基督教会広島教会)が「分かち合う者に」(出エジプト記20:1〜2、コリントの信徒への手紙二11:20〜22)と題して開会礼拝をした。その後、公開講座が開かれ、古屋哲氏(大学講師)が「新たな入管指紋制度」と題して講演した。
講演の中で古屋氏は、外国人に対する指紋制度は2000年に全廃されたが、いま「テロ対策」の名の下で、日本に入国・再入国する外国人から、指紋や顔写真など生体情報を登録させようとする入管法・外登法の改悪が画策されていることを指摘。その問題点を詳細に分析し、批判した。
20日には、柴田もゆる牧師(日本基督教団廿日市教会)による聖書研究(使徒言行録9:32〜10:18)、金信煥(キム・シムファン)名誉牧師(在日大韓広島教会)による証言「在韓被爆者の支援」が語られた。
金師は、日本政府からも日本の被爆者運動からも見捨てられてきた「在日被爆者」「在韓被爆者」の人々との出会いをきっかけに始めた、「在韓被爆者渡日治療広島委員会」の21年間にわたる苦闘の歩みを証言した。
20日午後には、「日・韓・在日教会共同ブックレットの活用」「外国人住民基本法制定運動の新たな段階」「日・韓・在日教会の共同課題」という3つの議題について分団協議した。夜には全体協議が行われ、▲今年、北海道から九州までの各教会、各地域で100回の集会、ミニ学習会を開催すること▲第12回外登法問題国際シンポジウムを10月に韓国で開催することを決議した。
21日は幟町カトリック教会・世界平和記念聖堂で「共に歌い、共に祈ろう――戦後61年目の『廣島』から」をテーマに、第20回「『外国人住民基本法』の制定を求める全国キリスト者集会」が開催され、90人が参加した。
松浦悟郎(日本カトリック正義と平和協議会担当司教)によるメッセージ「主よ、見えるようにしてください」(マルコ10:46〜52)、山口県在住の歌手で在日二世の李陽雨(イ・ャンウ)さんによる歌と語りや、フィリピン人、中国人、日系ブラジル人、在日コリアンによる証言が語られた。
集会では、以下にある「私たちの宣言&私たちの共同の祈り2006」が司会者と参加者全員によって読み上げられた。
<私たちの宣言&私たちの共同の祈り2006>
1.神のいのちの息吹き
司会:「人よ、何が善であり、主が何をおまえに求めておられるかは、おまえに告げてある。正義を行ない、慈しみを愛し、へりくだって神と共に歩むこと、これである。」(ミカ6:8)
全員:歴史を導かれる神さま。私たちは過去を振り返り、現在の課題に向き合い、未来への希望を展望するために、ここ「広島」の地に集められたことを感謝します。
司会:神は、キリストと共に、正義と平和のために働く者となることを、日本人にも、外国籍住民にも求めておられます。
全員:神さま。私たちを暴力と破壊の道具とならないよう、一人ひとりに「いのちの息吹き」を吹き込んでくださり、共に行動する勇気を与えてください。
司会:私たちは、すべての命が「かけがえのない存在」であることを教えられています。それを活かすことを知らされています。
全員:神さま。私たちを、人の力や利害により歪みあう状態から解き放ってください。
2.「共生」の自由を得るために
司会:「私は今日、天と地をあなたたちに対する証人として呼び出し、生と死、祝福と呪いをあなたの御前に置く。あなたは命を選び、あなたもあなたの子孫も命を得るようにし、あなたの神、主を愛し、御声を聞き、主に付き従いなさい。」(申命記30:19〜20)
全員:私たちは命の主である神に、争いではなく、共に生きる自由を与えられています。死ではなく命を、喜びを、そして国境を越えて生きる自由を。
司会:私たちは、悪しき力と闘いながらも、敵を赦すことを選びます。
全員:私たちは、自分たちが犯した歴史の過ちを償う道を選びます。
司会:私たちは、日本に生きるすべての人の生き方が大切にされる道を選びます。
全員:私たちは、非暴力によって、あらゆる差別に抵抗します。本当に必要なものを分かち合う生活を実現します。命をいとおしむ道を選びます。
3.「外国人住民基本法」制定を展望して
司会:私たちは、歴史の主であり、また命の主である神に約束します。在日・日・韓三教会が、この1年も共に歩み続けられるよう、導いてください。
全員:三教会が協力し「外国人住民基本法」制定のために歩むことを約束します。
司会:三教会の歩みの中心に、いつもあなたが平和の主として共にいてくださることを信じます。
全員:すべての民族が、赦しと和解を実現できますように。わたしたちは、人種、民族、性、国籍など、多様さを理解し合う「いのち」を求めます。
司会:生きる力を奪われ、日々の糧に苦労する者に対し、私たちが寄り添うことができますように。自分たちのために富を蓄え、権力に巻き込まれる者の道を歩むことから解放してください。
一同:私たちは今、国を越えて移動しなければならない人々を受け入れ、共に生きる方法を探します。今日よりも明日がよく、明日よりもあさってがよりよくなるように努めます。主よ、私たちの祈りを聴きいれてください。そして祈りを行動へと移せるようにしてください。私たちの主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。
2006年1月21日 外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会(外キ協)
(幟町カトリック教会・世界平和記念聖堂)