国際的な人権問題に取り組む人権擁護団体「アムネスティ・インターナショナル」日本財団は2日、米国で1000人目の死刑執行が近づいているとして、同国政府と連邦当局に対し、死刑執行の停止と死刑制度の見直しを求める声明を発表した。
「死刑は恣意的であり、本来の目的である犯罪抑止の効果がない。それどころか、死刑は被害者を増やし、社会を全体としておとしめるものである」と指摘している。
米国での死刑執行が1977年に復活して以来、999人目の死刑が11月29日、オハイオ州で執行された。
声明の中で、アムネスティは、死刑囚に貧困層や有色人種に偏りがあることを指摘し、弁護士の有無など裁判上の不平等を指摘している。また、国際人権基準で禁じられているにもかかわらず、知的障害を持つ人々や未成年時に犯罪歴のある人々に死刑を適用することを強く非難した。
声明によると、米国の死刑執行のうち全体の80%が南部の限られた州で行われている。また、全体の半数近くがテキサス・バージニア両州で執行されている。米国ではニューヨーク、イリノイ、ニュージャージ州が死刑制度を廃止していることから、死刑制度の公正さと有効性に問題があると指摘した。
アムネスティは、死刑制度の維持に費やした財源を包括的な更生プログラムや被害者支援、犯罪防止に利用するべきと提案。死刑のむなしさと人権への再認識を迫った。
1000人目の死刑囚とみられるのは、カリフォルニア州の刑務所で服役するスタンリー・ウィリアムズ死刑囚。ロサンゼルスのギャング組織を率いた同死刑囚は、1981年に複数の強盗事件で4人を射殺したとして死刑判決を受けた。同死刑囚は無実を主張する一方、ギャング時代の悪行を悔いて児童書を執筆するなど態度を変えているという。支援者は同死刑囚をノーベル平和賞候補に推薦するなどして減刑を求めている。
時事通信(11月21日付)によると、同州の検察当局は同死刑囚について「死刑に値する冷酷な殺人犯だ。殺害された4人も彼に命乞いをしたのに、彼は躊躇(ちゅうちょ)せず射殺した」と、減刑に応じない方針だ。死刑は今月13日に予定されている。