イタリア判事は、カトリック司祭がイエスキリストの存在を公言したことで民衆を騙し続けてきたと主張する無神論者による裁判の申し立てを却下した。
ローマ東部の町ビテルボ地方裁判所のガエターノ・マウトネ判事は、72歳のルイジ・カッシオーリ原告による申し立てはキリスト教に対する誹謗中傷にあたるとして調査されるべきだとした(AP通信)。カッシオーリ氏は現在76歳のエンリコ・リッヒ司祭がローマの法律に反して「人気のある信仰の濫用」、「擬人化」を行うことでイエスキリストが実際に存在したと教え続けてきたことに対して告訴していた。
リッヒ司祭は少年時代、神学学校でカッシオーリ氏と学友であった。リッヒ司祭の弁護士ブルーノ・セベロ氏によると、判事による今回の判断には非常に満足しているという。
AP通信によると、セベロ弁護士はリッヒ司祭について、「彼は小さな町の教区司祭であり、このようなことでマスコミからスポットライトを浴びようとは思ってもみなかったことだろう」と話したという。
一方リッヒ司祭はこの裁判が終了したことを神に感謝し、ロイター通信に「私はもしこの裁判が継続されて論議されていたらと考えると、このような形で終えられたことを本当に嬉しく思う」と述べた。
カッシオーリ氏は、リッヒ司祭が教区会報で、ベツレヘムのマリアとヨセフ夫妻のもとに誕生し、ナザレの町に育ったイエスキリストが存在したと記述したことを訴えた。リッヒ司祭は、イエスキリストの存在を証明する歴史的書物は山ほどあるとして反論した。
カッシオーリ氏によるとこの裁判は、すべてのカトリック教会が2000年にわたり行ってきた過ちについてリッヒ司祭を通して告発したのだという。カッシオーリ氏は、イエスという人物は当時のユダヤ人革命家ガマラのヨハネという人物をもとに作り上げられた存在であると信じているという。
カッシオーリ氏は、法廷でキリスト教徒が礼拝する自由を妨害しようとしたわけではなく、むしろカトリック教会が、ただ単にでっち上げたにすぎないような人物を歴史的人物として存在していたと何度も繰り返し唱えることで、利益と権威を保持してきたことを非難したかったのだという。
裁判で、カッシオーリ氏はキリスト教に対する誹謗中傷を行ったとして調査を受けるべきだと伝えられたとき同氏は、もし自分が誹謗中傷を行っていると言いたいのであれば、その前に検察当局はイエスキリストが実際に存在したのだということを証明しなければならないと主張したという。
カッシオーリ氏は裁判を起こす以前から、イタリアのようなローマカトリック国家でこのような訴えが通るとは期待してはいなかったが、「しかしながらイエスキリストが存在したという確固たる証明が何もない。このような結果は驚くべきことでも何でもないが、しかしだからといってこれで終わったわけではない」と述べたという。
AP通信によると、カッシオーリ氏はこの件を欧州人権裁判所に持ち込むつもりだという。カッシオーリ氏は「この件は今後も議論するに値する非常に重要な問題である」とし、今後もこの裁判を継続させる強い意欲を見せている。