宗教を広めたとして逮捕、刑務所に収監されていた教会のベトナム人指導者が今月出所していたことが、キリスト教徒弾圧を監視する国際宣教団体、「殉教者の声(The Voice of Martyrs)」の報告で日本時間15日までに分かった。
報告によれば、この男性信徒は今月3日に釈放された。今月20日に収監11年目を迎える直前だった。男性の名はパオ・サンソさんで、現在、体調、信仰、ともに良好とのこと。
パオさんは1990年に「伝道容疑」で逮捕、刑務所に8カ月間収容され、伝道活動の中止を条件に釈放された。条件を受け入れることができないパオさんは引き続き伝道に励み、1995年5月、再び逮捕、投獄された。
「殉教者の声」は、ベトナム国内で民族伝道を行うキリスト教徒に対する迫害と逮捕が相次いでいると報告した。警察による強制捜査や不当な取調べが日常的に行われ、特に牧師など牧会者や少数派民族のキリスト教徒に対する暴力が横行しているという。
米人権団体ヒューマンライツウオッチ(本部・ニューヨーク)は最新の報告でベトナムの人権状況に関する16ページのレポートを発表。これによると、北部に住む山岳民(モンタニャール)など少数民族や西北地方の未登録のプロテスタント教会は治安当局による厳しい弾圧を受けている。西北地方の省政府は教会や寺院を認めず、集会に参加する信徒たちを拘束・投獄しているという。棄教を強制する治安部のキャンペーンも各地に拡大。当局は牧師など教会指導者の遠方への外出を禁止し、軍部と共産党員が手を組んでキリスト教家庭への食糧配給を止めたり、家宅捜索の名目で財産を没収したりした等の報告も多い。
ヒューマンライツウォッチは、ベトナム政府による信教の自由を保護する動きを評価する一方で、同政府が「宗教は国家の脅威」との認識を依然として示していることから、体制の改善のために今後さらに働きかけが必要としている。
ベトナムは、米国務省による世界の宗教の自由に関するレポートで宗教弾圧を行う国のうち「特に懸念のある国」として毎年報告されるほか、米・国際オープンドアーズによる「キリスト教徒が信仰を理由に激しい迫害を受ける50カ国」で3位、「特に激しい国」に位置づけられている。(ChristianPost.com)