在日大韓基督教会は12月16日付で「自衛隊のイラク派兵に反対する声明」と題した声明文を発表した。声明の内容は以下の通り:
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<自衛隊のイラク派兵に反対する声明>
日本政府は今月9日に行なわれた臨時閣議において、自衛隊をイラクに派兵するための基本計画を決定した。私たち在日大韓基督教会は、今年4月8日付の声明で、韓国軍の派兵に対して「剣を取るものは剣で滅ぶ」という立場から反対した。私たちは自衛隊のイラク派兵にも断固として反対する。
今回の決定は、現時点での自衛隊のイラク派兵に反対もしくは慎重である多くの日本国民と在日外国人の意見を無視するものであり、また、平和憲法および、そのもとで日本が築いてきたアジアをはじめ諸外国からの信頼をも踏みにじるものである。
小泉首相は会見で、憲法前文を引用しながら、今回の自衛隊派兵が憲法の精神に沿ったものであると主張した。しかし、戦闘地域と非戦闘地域の区分を政府でさえ答えられず、自衛隊が「正当防衛」という名のものにその武力を行使する可能性が高い現状でのイラク派兵は、憲法第9条「日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」に明確に違反すると考える。
現在イラクやアラブ世界で活動するNGO団体の多くが、自衛隊派兵により、現地の人たちと今まで築いてきた信頼関係が崩れ、自分たちもテロの対象となり、人道支援活動の後退が余儀なくされることを恐れている。イラク国内からも「友人と思っていた日本人と敵になりたくないので自衛隊を送って欲しくない」との思いが日本国民に届けられている。イラクに派遣される自衛隊は米軍の「同盟軍」としてしかイラク人には映らないであろう。日本政府が行なおうとしていることは、イラクと日本の市民を分断することであり、それは国家・民族の枠を超えた共存の社会を目指す21世紀における人類のヴィジョンに逆行するものといえる。
日本政府は、今回の自衛隊派兵が「テロに屈しない」という意志表明であるとしている。私たちは、自衛隊派兵がテロに屈しないことを意味するとは考えない。テロに屈しないとは、テロを力で抑えようとして結果的に暴力の連鎖を作り出すことではなく、テロが起こる原因となっている新自由主義的競争による世界の中にある不平等を正していくことである。
とくに日本の中のマイノリティが多く集まる在日大韓基督教会は、今回の自衛隊派兵が日本の軍事主義化を促進し、それに伴う排外的ナショナリズムの高揚に発車をかけることを危惧する。このことが起こらないためにも、日本政府は、力によらない平和共存への道を探るべきである。
私たちキリスト者はイエス・キリストがこの世に来られる日を待ち望むこの時期に、もう一度、「平和を実現するものは幸いである」という平和の主のみ言葉をかみしめながら、平和と和解を阻害する自衛隊のイラク派兵に反対するものである。
2003年12月16日
在日大韓基督教会
総会長 崔正剛
宣教奉仕委員会委員長 李根秀