三浦綾子記念文学館(北海道旭川市)で8日、39回「館長三浦光世の小さな講演会」が同館主催で開催された。
「愛は人の徳を高める」というテーマで講演した三浦氏は自分の人生において忘れることができない一人の男性について証した。
三浦氏は幼い頃、病状の父と共に生まれ故郷の東京を離れ、北海道の祖父のもとで育った。そこで熊谷猛也(くまがいたけや)という上司に見出され、国家公務員への道が拓けたという。また、熊谷さんは、分け隔てなく全ての人に優しく親切に接する素晴らしい人格者だったと話す三浦氏。「私が17歳の時、腎臓結核を患った際、何も言わずお金を貸してくれたのです」病が完治した三浦氏は、借りたお金を返すために熊谷さんの自宅を訪れたものの、熊谷さんはお金を全く受け取ろうとしなかった。それに困り果てている三浦氏を見て、熊谷さんは借りたお金の半分だけを受け取り、残りの半分は棒引きにしてくれた。三浦氏はその感激が今でも忘れられないという。「いつも様々な場面で多くの方からいただく「恩」のひとつひとつに感謝する度に「愛は人の徳を高める」という御言葉を私は真理として感じざる得ません」と語った。講演後は、希望者との記念撮影などが行われた。
光世氏は昭和39年、妻である故三浦綾子さんが「氷点」で作家としてデビューした後、後述筆記を通して作家活動を支えた。また、自らも短歌雑誌「アララギ」に拠る一派、アララギ派の歌人として活躍している。平成11年、綾子さんがその生涯を終えてからは、光世氏がその仕事を引き継ぎ、講演や執筆活動に勤しんでいるという。
光世氏の自著には「少年少女の聖書物語」「妻と共に生きる」「死ぬという大切な仕事」「綾子へ」「妻三浦綾子と生きた40年」「希望は失望に終わらず」歌集「夕風に立つ」などがある。
次回、同講演会は4月12日に開催される予定。入場無料、手話対応。問い合わせは三浦綾子記念文学館(電話:0166・69・2626)。