慶應義塾大三田キャンパス北館2階で六月五日、公開シンポジウム「さまよえるグーテンベルク聖書‐ペルプリン本とHUMIプロジェクト」が行われる。
「さまよえるグーテンベルク聖書」とは、ポーランド・ペルプリン神学校図書館所蔵のグーテンベルク聖書のこと。第二次世界大戦のワルシャワ侵攻の際にナチス・ドイツの手を辛くも逃れ、この宝物を守ろうとした人々の決死の努力によって、パリからロンドン、グラスゴーを経てオタワにまで渡り、戦後一九五九年にようやくポーランドに里帰りしたという逸話がある。 こうした経緯から、ポーランドではペルプリン本グーテンベルク聖書はあつい信仰の対象になっている。
二〇〇〇年はグーテンベルク生誕六〇〇年にあたる年であった。それを記念して、ポーランド・ペルプリン司教座印刷局(Bernardinum)はペルプリン神学校図書館所蔵グーテンベルク聖書のファクシミリ(復刻版)製作プロジェクトを企画した。その際、慶應義塾大HUMIプロジェクトに技術協力を要請したとのこと。二〇〇二年五月には五名の遠征隊を現地に送り、特製ブック・クレイドルを用いた独自の手法によって全ページの撮影を行った。二〇〇三年春までには装丁や透かし模様なども再現したファクシミリが完成し、第一番目のセットは在位二十五周年を記念してローマ法王に献上された。二〇〇四年一月には、HUMIプロジェクトの貢献に対して、ファクシミリ一部をタデウス・セロツキ印刷局長から慶應義塾図書館へ贈る式典が三田メディアセンター内HUMIスタジオで行われた。
今回のシンポジウムでは、ペルプリン本とそのファクシミリ製作にまつわる講演および関連資料の展示が行われる。講演会参加には事前に登録が必要。登録はwebページhttp://www.humi.keio.ac.jp/wgp04/からできる。