スイスジュネーヴのエキュメニカルセンターにおいて、6日から8日まで3日間にわたる「21世紀におけるキリスト教」に関する会議が行われ、ドイツ福音主義教会連盟(EKD)指導者らが、議論に参加するために同センターを訪れた。会議には世界教会協議会(WCC)代表者その他スタッフら、ルーテル世界連盟(LWF)および世界改革教会コミュニオン(WCRC)代表者らが出席した。
EKD評議会議長のニコラウス・シュナイダー氏は、これまでのエキュメニズム運動の問題点として「ステレオタイプ(固定観念)を退けなければならない」と警告し、現代における世界キリスト共同体の多様性に加え、それぞれの地域の教会の使命が、その存在する社会のうちでキリストの満ち満ちた姿を表せるようになるための課題について言及した。
スイスボセーのエキュメニカル研究所に務めるブラジル人神学教授のオデール・ペドロソ・マテウス氏は、「100年前の西欧神学はキリスト共同体に分離・不満・論議を噴出させたという点においては『精神的な傷を残すやり方で』キリスト教の多様化を促進させてきた。南半球においては多元主義の価値観が良い意味で流入してきて、共通の課題に立ち向かうために多様な人々に機会を与えた」と指摘した。
インドネシアから来たLWFスタッフのマルティン・シナガ博士は「キリスト共同体は多くの国家においてより広範囲の宗教多元主義を包容し、政治的・預言的に実際に影響を与えていく必要のある『小さな群れ』として見られている。そのような小さな群れの中にあって、クリスチャンとしての確固としたアイデンティティが彼らの生活や仕事を通して福音を伝える少数派教会の基盤を形成している」と述べた。
WCRC代表のクリスティン・グリーナウェイ氏はキリスト者同士が協力して働きを成す多くの約束された機会が「私たちの互いに対するステレオタイプによって阻止されてしまっている」ことを警告し、エキュメニズム運動に加わる諸教会が、保守的な福音主義教会やカリスマ教会から固定観念による偏見により分離してしまっている現状に懸念を示した。同氏は「私たちは相互が誤解してしまっていることによってエキュメニズム運動を難しくしてしまっている。エキュメニカルな教会はより他教会と広く効果的な対話を行っていくことで、伝統的価値観を超えていかなければならない」と述べた。
EKD代表団の一人でドイツプロテスタント援助団体で牧師を務めるコーネリア・フルクラッグ・ウェイツェル氏は「何か重要なことを放棄しなければならない事態に直面したとき、あるいは彼ら自身の信条とは異なる信条を受け入れようとするときに、『多元主義』が人々を脅かすようになっている」と指摘し、キリスト共同体が多様化する社会に存在する重要性を改めて強調した。
ドイツプロテスタント教会・宣教団体(EMW)のクリストフ・アンデルス牧師は、「現在のエキュメニズム運動は、伝統的な束縛が緩められ、共通の課題に共通の対策法をもって取り組んでいくことで新たな働きが起こってきている」ことを言及した。タンザニアのルーテル教会指導者のフィドン・ムォンベキ博士は、最近行われている国際会議において、神学的な教義に焦点を置くよりも、実践的に諸教会がなすべき課題に焦点が置かれるようになっていることを称賛した。
LWF副代表で米神学教授のキャスリン・ジョンソン氏は、教会間の対話が広範囲において行われるようになってきていることを証しし、「現代のキリスト共同体は、ますます多様化していることを認識している。そのような中に私たちは生活している。グローバルスケールだけでなく、すべての国々、各都市でそのような傾向にある。この世界それ自体がキリスト共同体の方に向かってくるようになってきている」と述べ、諸教会が社会が直面する共通の課題について取り組んでいく必要性を強調した。
WCC信仰職制委員会ディレクターのジョン・ジボー博士は、多様化する文化や国籍をもつ人々が隣り合わせに生活するようになっており、世界中様々な教会で共通の課題に直面していることを認識し、「私たちの前に置かれた教会神学的な課題は、移民に対する問題だ。これは実際的な問題であるだけでなく、教会論的な深い問題を私たちの前に提示している。信仰・一致・宣教および地域ミニストリーにおいて影響が生じている。今日移民の共同体がそれぞれの社会の中に存在しており、私たちの社会の隣人として存在している移民に対して、教会論的・牧会論的に責任を果たしていけるようにならなければならない」と述べた。