国際飢餓対策機構では、関東のキリスト教会の青年たちのグループ、地元の教会の牧師や教会員、大学生の全国組織から派遣されてきたグループ、愛知県から来た日本在住のブラジル人のグループ、あるいは個人参加のボランティアの人々などと協働しながら支援を行っている。「被災された方々を何でもいいから助けたい」という人間の中に溢れる愛の精神が、これらの人々の働きをひとつに結び付けている様子が垣間見られている。同機構では、夜8時に仙台市内の活動拠点に集まり、活動報告会が行われている。報告会では「行政の手がまわっていない。まだまだ必要がある。5時になると警察も自衛隊も引き上げてしまうので、昼間と夜間のギャップがはげしい」などの生きた報告がなされているという。
3月31日で被災地支援の最終日を迎えたホクミン(北海道クリスチャン宣教ネットワーク)第3弾チームの活動報告では、当初釜石市での炊き出しを予定しており、前日より用意した200人分のとん汁とおにぎりを積み込み、現地に向かって出発したものの、釜石市における地元との調整が不調に終わり、予定した日に釜石市での炊き出しの許可を得ることができなかったという。そのため、関係各方面との調整を経て、隣接する大槌町へと向かったが、大槌町でも炊き出しの許可を得ることはできなかったという。
現地の調整を無視して支援活動を行うことは混乱をもたらし、被災地の方々に迷惑をかける結果となってしまうため、「炊き出しはできない」という条件のもと、二つの避難所を指示され、そのうちの一つである大ヶ口町の多目的集会所に到着し、担当者と話したところ、急きょ夕食として炊き出しを行う許可が得られ、用意した食材を無駄にすることなく炊き出しを行うことができたという。
被災地での支援はキリスト教を伝えるということよりも、まさに被災地のありのままのニーズに答え、被災者のために仕え、地元のために仕える「愛の実践」の場の連続であるといえることが伺える。ホクミンの報告では「今回の活動は予想しない事柄の連続でした。ボランティア活動のむずかしさと、主の導きの確かさを強く感じさせるものでした。この大震災で家族や家を失い、未だ不自由な生活を送っている方々に、主の慰めがありますように、そしてこの働きがより良い形で進められることができるよう、お祈りください。今回の私たちの活動をすべて導き、その中に働いてくださった主の御名を、心からほめたたえます」と述べられていた。
さまざまな支援団体が地元や政府と連携して「被災者の役に立ちたい」という共通の目的をもってひとつになろうと活動方法を模索しており、そのような中から「東北ヘルプ」のような超教派ネットワークによる地元と教会を結び、また教会と教会、支援団体を結ぶ新たな災害支援ネットワークも立ち上げられた。教会が地元の人々の心を開き、「キリストのからだ」を拡張させていく新たな動きが「愛の実践」を通して着々と進んでいる。
放射能の危険とも向き合わなければならない福島においては、クラッシュ・ジャパンは福島方面調査チームを派遣している。同チームスタッフは「教会と避難所の雰囲気は昼と夜ほど違います。教会では愛、喜び、平和を感じることができました。なぜこのようなことが可能かと問われれば、それは明らかです。なぜなら神様の愛がこれらの人たちをおおっているからです」と強調した。同チームリーダーを務めるクラッシュ・ジャパンIT部門責任者のスコット・イートン氏は、「私の福島についての祈りは、彼らが恐怖に負けないということです。そして彼らが力の源、この様な状況下に耐え得るただひとつの力、即ちキリストの力を見つけることです」と語っている。
国際飢餓対策機構スタッフの小島亮子さんは、「被災者の方は体の苦しみだけでなく、こころに苦しみを持っておられます。日本国際飢餓対策機構の中でずっと大切にされてきたことは、『体とこころの飢えに応える』ということです。イエスキリストがそうされたように人々と同じ立場に立ち、共に暮らし、共に泣き、共に苦しみ、共に感じ、共に願い、そんな日々を願いながら、現場の本当の必要を見つけ、そこにある一筋の希望を信じ続ける団体です」と活動状況を報告している。同機構スタッフたちは、夜中まで走り回り、泥まみれになりながら、現地の方々と共に泣き、共に寄り添い合っているという。物資の支援以上に、キリストの愛の実践を通して、キリストの力が被災地を通して伝えられ、「キリストのからだ」を通してネットワークが拡張し、ひとつになっていくことが期待されている。