イスラム教を冒とくしたとして、パキスタンで女性に死刑判決が下された。冒とく法違反で女性に対し死刑判決が下されたのは初めて。英国に本拠を置くキリスト教迫害監視団体『リリース・インターナショナル』(以下、リリース)が9日伝えた。冒とく法は、1986年に独裁者ジアウル・ハク大統領が制定して以来、他宗教の信者に対する迫害や暴力を合法的に行う根拠となっている。
死刑を言い渡されたアシア・ビビ(Asia Bibi)さん(37)は2児の母で農業で生計を立てていた。同団体によると、ビビさんは昨年6月、宗教をめぐって同僚との間で口論となり、その際にイスラム教を冒とくしたとして逮捕された。
イタリアに本拠を置くキリスト教系メディア、『アジア・ニュース』によると、複数の同僚がビビさんに対し、キリスト教信仰を止めてイスラム教に改宗するよう迫ったという。ビビさんは、イエス・キリストが人類の罪のために十字架で死んでくださったことを同僚に話した上で、ムハンマドが同僚に何をしたのかと質問した。
イスラム教徒である同僚らはビビさんを殴打して個室に監禁した後、住民やイスラム教聖職者らがビビさんとビビさんの2人の子に暴力を振るった。
ビビさんと家族を保護支援している現地のキリスト教団体『パキスタン・シェアリング・ライフ宣教会』によると、冒とく法違反で死刑判決が下されても、過去に刑が執行されたことはないという。一方で、高等裁判所への控訴請求には手続きだけで数年がかかる。
また、第一審ではビビさんに対し、死刑判決に加えて現地の水準で最低賃金の2年半分に相当する金額の罰金も科しているため、家屋など財産が没収される可能性もある。
リリースは今年、パキスタン政府に信教の自由を訴える署名を公式サイトで募っており、「Petition」用紙をダウンロードして氏名と住所などを記入し、リリース事務局まで郵送すると署名活動に参加できる。要送料負担。昨年はエリトリア政府に対する署名活動を行い、4万3千名分の署名を同政府に提出した。