エルサレムに拠点を置く宗教間対話促進団体「ロッシング教育対話センター」が最近発表した報告書(英語)によると、イスラエルではキリスト教会などに対する攻撃が急増するとともに、ナショナリズムが高揚しており、キリスト教徒に対する敵意が高まっているという。
報告書によると、イスラエルのキリスト教指導者やキリスト教の専門家らは、キリスト教徒の間で不安が高まっており、それらはより広い社会的・政治的傾向を反映したものだと警告している。
「キリスト教徒に対する敵意は、一部の地域社会では長年にわたって生じてきましたが、現在ではより広範囲で深刻な現象にまでエスカレートしています」
「エルサレムのピエルバティスタ・ピザバラ枢機卿が攻撃の急増について述べたように、これらの人々(攻撃者たち)は、自分たちが守られていると感じています。文化的、政治的な雰囲気が、キリスト教徒に対する行動を正当化したり、容認したりするようになってしまっています」
報告書によると、イスラエルのキリスト教コミュニティーでは昨年、教会の施設や個々のキリスト教徒に対する物理的な攻撃から、言葉による嫌がらせ、墓荒らし、聖職者や巡礼者に唾を吐きかける事例まで、嫌がらせの「頻度」と「強度」の両方が大幅に増大した。
「唾を吐きかけることは、エルサレムの宗教生活では何十年も前から知られていたことでしたが、白昼堂々と、群衆や監視カメラの前で、聖職者や聖地、さらには巡礼者に向かって唾を吐きかけるようになりました」
イスラエルでは唾を吐きかけることは重罪とされ、人種的または宗教的な理由で行われた場合は、最高10年の禁錮刑を含む厳しい罰則が科せられる。しかし、被害者はこの法律を知らないことが多く、通報することに消極的だ。また、被害者が被害届を出したとしても、ほとんどの被害届は受理されることがないという。
唐辛子スプレーの使用など、その他の形態の暴行も一般的になってきている。宣教活動をしていたのではないか、あるいはユダヤ人をキリスト教に改宗させようとしていたのではないかと疑われた人々に対し、こうした嫌がらせが行われることが多い。宣教活動に対する敵意は特に正統派ユダヤ教徒によるもので、襲撃やコミュニティーからの追放といった嫌がらせや脅迫を受けたとする証言が数多くあるという。
一方、報告書はイスラエルでは宣教活動は違法ではないとして、次のように指摘している。
「イスラエルでは布教活動が非合法であると誤って信じられていることが多いですが、唯一の制限は、親の同意なしに18歳未満の人に布教することと、布教中に改宗の可能性のある人に物質的利益を提供することが違法とされていることだけです」
エルサレム旧市街に住むアルメニア系住民のように、ユダヤ人居住区の近く、あるいはユダヤ人居住区内を拠点とする一部のキリスト教コミュニティーは昨年、度重なる襲撃に遭っている。報告書には、次のように記されている。
「襲撃事件に関する過去の記録によると、2023年も深刻な財産的・身体的襲撃事件が顕著に増加しました。メアシェアリーム(正統派ユダヤ教徒が多く住む地区)に隣接するポーランド系の修道院では、数カ月にわたってさまざまな嫌がらせが行われ、こうした不当な扱いがやんだのは、宗教自由データセンター(エルサレム周辺の宗教的嫌がらせを監視するNGO)に通報するようになってからでした。しかしそれでも、唾を吐きかけたり、言葉による嫌がらせをしたり、近くの建物から敷地内に物やゴミを投げ入れたりする事例は続きました」
イスラエルのキリスト教徒は、人口の1・9パーセントに過ぎない少数派で、その4分の3はアラブ系住民とされる。