教皇ベネディクト16世は、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を否定した司教の破門を撤回したことを事実上謝罪した。ロイター通信がイタリア紙レプブリカ(電子版)の報道として伝えた。
教皇は、世界の司教に送った書簡の中で、破門を撤回したのは司教のホロコースト否定の発言を知らなかったためと説明。事前の調査が甘かったことを認めた。
また、ユダヤ人社会をはじめ世界中で論争を巻き起こしたあとも、今回の処置について十分な説明責任を果たさなかったことも認めた。
今回の破門撤回については、ユダヤ人社会をはじめカトリック教会内からも厳しい非難が相次いだ。ドイツ司教会議前会長のカール・レーマン枢機卿がバチカンへ謝罪を求めるなど、枢機卿レベルからも明確なバチカンへの非難の声が上がっていた。
問題のリチャード・ウイリアムソン司教は、昨年11月のスウェーデン国営テレビのインタビューで、ユダヤ人600万人がガス室で殺害されたことは史実ではないと語り、ホロコーストを否定。第二次大戦下でのユダヤ人の死者は20万から30万人だと主張した。
ウイリアムソン司教の所属する「聖ピオ十世会」は、第二バチカン公会議の改革に反対して設立。創設者のマルセル・ルフェーブル司教がバチカンの承認なしに聖職叙階を行ったことが直接の契機となって、前教皇ヨハネ・パウロ二世によって1988年に破門された。
今回の破門撤回は、聖ピオ十世会との和解を象徴するものであるが、前教皇が長年取り組んできたユダヤ教との歴史的和解の進展には大きな障害となった。