日本福音ルーテル教会(永吉秀人総会議長)は8日、所属教会の一つである日本福音ルーテル長崎教会(長崎市)で長らく牧師を務めた岡正治氏(1919~94)が、生前に性加害を行っていた問題を受け、声明を発表した。
声明は、教会として全ての人の尊厳が守られることを目指してきたにもかかわらず、かつて牧師として所属していた岡氏の性加害によって被害者の女性に「深い痛みを与えてしまった」とし、「自らの罪として重く受け止め、神の御前で悔い改めて、当教会を正していく所存です」とした。
その上で、「当教会は、いかなる性暴力・性虐待も容認しないという立場を表明いたします」とし、性暴力や性虐待の防止のみならず撲滅を目指す取り組みを教会全体で進めていくと強調。「キリストの体である教会が、全ての人にとって安全であり、魂を委ねて安らぐことのできる場所となるよう、今後の働きにおいても当教会は、性の尊厳を踏みにじられた人々の立場に立ち、いのちの尊厳の回復に努め、取り組みを進めてまいります」とした。
3期12年にわたって長崎市議を務め、朝鮮人被爆者の実態調査などに取り組んだ平和活動家としても知られている岡氏の性加害は、岡氏の名前を冠していた「岡まさはる記念長崎平和資料館」(長崎市)が、昨年10月に公表したことで広く知られるようになった。資料館は、2020年の時点で被害を把握していながら対応を怠ったことなどを女性に謝罪し、問題の公表後、名称変更や展示内容の見直しなどのために半年間休館した上で、今年4月に「長崎人権平和資料館」として再開している。
女性は日本福音ルーテル教会の声明を受け、「今回、私の声を受け止めてくださり、再発防止、2次加害防止の声明を出されたことに感謝申し上げます」とコメント。その一方で、「神に対して悔い改めるだけではなく、性加害による心身の侵襲性の深刻さを考えていただき、被害者に向き合った謝罪の言葉も頂きたかったです」と話した。
また、「私は今でも、加害者を許すことができていません」とし、「性被害者にとって、性加害は生命を奪われたに等しい暴力」だと強調。昨年、性犯罪に関する刑法が大幅に改正されたものの、被害者の人権を軽視する構造は依然としてあり、2次加害が社会にあふれ、被害者の心身をケアする医療や福祉も十分には機能していないとし、「泣き寝入りする被害者が圧倒的に多い現実があります」と話した。
なお、日本福音ルーテル教会によると、岡氏は女性に性加害を行った1994年当時、既に定年退職しており、元牧師の立場にあった。また、同教会は、女性のプライバシー侵害や2次被害につながりかねないとして、被害関係者の詮索をしないよう求めている。