かつて「繫栄の神学」を説くなどして物議を醸したカナダ人テレビ伝道者のベニー・ヒン氏(71)が、最近のインタビューで、数十年に及ぶ自身の伝道活動において「最も後悔している」という2つの事柄について話した。それは、「正しくも主からのものでもなかった」預言を広めたことと、繁栄の神学を推し進めたことだという。
「私の伝道活動における二大後悔として、まず、預言に関して、私はあまり賢明ではなかったことが何度もありました」。ヒン氏は、カリスマ派・聖霊派の雑誌「カリスマ」の発行人であるスティーブン・ストラング氏とのインタビュー(英語)で、そのように打ち明けた。
「私は伝道大会にゲストを招きましたが、彼らの預言は本物の預言ではなかったので、人々の人生だけでなく、私の評判にも害をもたらしたと思います。彼らは贖罪の枠外に出たのです」
「また、神が私に示されていない何かを示されたと思ったこともありました。そして、私はそれを口にしました。しかし、コリントの信徒への手紙一13章には、私たちは皆、一部分だけを預言しているのだと、はっきり書かれています。つまり、私たちは全体像を見てはいないのです。そして悲しいことに、戻ってやり直すことができればいいのですが、私が語った預言の中には、正確でなかったり、主から来たものではなかったりするものもありました」
「しかし、完璧な人間などいるのでしょうか。私はもちろん、そのことのために、人々に許しを乞うています。私はただの人間であり、そのような間違いを犯しました。私は完璧ではないので、この先もまた同じような過ちを犯すと思います。しかし、自分がミスをしたときのことに焦点が当てられるのは悲しいことです。でも、それはそういうものです。しかしまた、ミスを犯さなかったこともありました」
ヒン氏は、自身の伝道活動におけるもう一つの大きな後悔は、繁栄の神学を説いたことだと語った。1980年代以降、イスラエル生まれの米国系カナダ人であるヒン氏は、神は積極的な信仰と忠実な十分の一献金に対し、健康と富をもって報われるとする繁栄の神学で最も知られた伝道者の一人だった。
「それ(繁栄の神学からの悔い改め)は、私にとって非常に難しいことでした。私が伝道の働きを始めたころであれば、それは簡単なことでしたが、働きが大きくなると、私の悩みが始まりました。誰かを責めるつもりはありませんが、悲しいかな、あるところまでいくと、それが難しくなるのです。どうすればいいのか、どうすればそこから抜け出せるのか分からなくなるのです」
「それ故、私は2019年に、その仕掛け(繁栄の神学)にはもう加担したくないという結論に至ったし、今でもそれを支持しています。しかし悲しいことに、私はプレッシャーに負けてしまい、そのプレッシャーのせいで、言ってはいけないことを言ったり、してはいけないことをしたりしてしまいました。そのことについては、本当に申し訳なく思っていますし、私たちを見ている親愛なる人々に、本当に許しを乞いたいです。そして、できるだけ聖書に忠実であるよう、心を尽くして努力しています」
「今、私の焦点は主であり、主のみです。そしてもちろん、私たちの働きのために資金を集めなければならない時が来たとしても、私が知っている限り、聖書的に、そしてバランスよくそれを行うつもりです」
ヒン氏が、「繁栄の福音」や「健康と富の福音」などとも呼ばれる繁栄の神学を初めて公に否定したのは、2019年のことだった(関連記事:ベニー・ヒン氏、「繁栄の福音」の誤り認める 自身の神学の修正を告白)。ヒン氏は、この告白後に受けたインタビュー(英語)で、繁栄の神学が「手に負えなくなった」とし、「多くの人々を傷つけた」ことを認めた。そして、残りの人生は、それまで何百万ドルもの献金を集めたとされる繁栄の神学ではなく、伝道と福音に集中したいと語った。
「この地上で私に残された時間はどれくらいあるでしょうか。これからの20年に、私は何をすべきでしょうか。それは私が決めねばならないことです。これからの15年から20年、私が説くのは十字架であることを確認したいと思います。それは、私の人生における真の召命です」
「私はそのことによって知られたいと思います。繁栄(の神学)の教師として知られたくはありません。繁栄は、聖書の中の一つのことに過ぎません。神の御言葉には、繁栄よりももっと多くのことが書かれていますが、今はその仕掛け(繁栄の神学)が大きな問題になってしまっているのです。それは、やめなければなりません」
ヒン氏については当時、6千万ドル(約93億円)の資産と複数の自家用ジェット機を所有しているとする報道があったが、ヒン氏はこうした報道に反論し、次のように述べていた。
「もしも私にそのようなお金があったら、神にささげます。狂気の沙汰です。おかしな話です。どうしてそんな報道が始まったのか、分かりません」
「聖書の繁栄とは、神が神の民を祝福し、神の民の面倒を見ることです。イエスははっきりとこう言われました。もし神が空の鳥や野のユリを大切にされるなら、私たちを大切にされないだろうか。何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはみな加えて与えられる、と」
一方、ヒン氏の繁栄の神学を公然と批判してきた、ヒン氏のおいで牧師のコスティ・ヒン氏は当時、米キリスト教メディア「クリスチャンニュース」(英語)に対し、単なる「後悔」ではなく「真の悔い改め」をヒン氏に望んでいると語っていた。また、ヒン氏は以前にも自身の教えに対して後悔の念を表明したことがあったが、再びその問題行動をしたことがあったとも指摘した。
「聖書における真の悔い改めとは、それが本当に悔い改めであることを証明する『行動』を常に伴うものです」。コスティ氏はそう述べ、真の悔い改めは、イエスに対する愛の故に、人々からだまし取った金を返した徴税人ザアカイに見て取ることができると説明した。
「イエスは彼(ザアカイ)を救い、その日のうちに彼の家に行き、共に食事をし、彼の過去と罪の中に愛と恵みを示されました。すると、ザアカイは喜びのあまり飛び跳ね、喜んで人々にお金を返し、またイエスに従うためにはどんなことでも行い、自身の行動を通して真の悔い改めを示しました」
「私の願いは、ベニーおじさんの(繁栄の神学を否定する)表明が、単に面目を保つため、あるいは自身の働きを守るために公にした後悔ではなく、真の悔い改めとなることです。そうであれば、彼は、キリストと完全な福音を得るためには、全てを捨てることもいとわないでしょう」