ウクライナの村での生活は常に困難だった。ヴェラはそれを身をもって知っている。キエフ郊外の村で生まれ育った彼女は、村を出て町で学び、そして故郷に戻り、結婚して子どもをもうけた。しかし、彼女の心にはいつも疑問があった。「いったい誰がこんなに美しい自然や動物をつくったのだろう。誰が世界の全てを相働かせ、互いに補い合うように配置したのだろう」
COVID-19のパンデミックによって、ズグロフカ村の生活は一変した。人々は家に閉じこもり、誰とも連絡を取らず、どこにも出かけなくなった。悲劇的なことに、ヴェラの夫はコロナで死んだ。子どもたちはすでに成人し、それぞれの家庭を持ち、遠く離れて暮らしていた。ところが彼女自身もコロナにかかり、健康を害していたのだ。
ヴェラは神についてますます考えるようになったが、彼女の多くの疑問に答えてくれる人は誰もいなかった。ある日、ヴェラの隣人が、新しい郵便配達の女性はクリスチャンだと教えてくれた。しかし、ヴェラは郵便物を受け取らなかったので、彼女に会うことはなかった。
2022年2月、ウクライナで戦争が始まった夜、ヴェラは子どもたちに電話をかけ、自分のところには戻ってこなくていいので西ウクライナに行くように伝えた。子どもたちはウクライナを去ったので彼女は一人になった。
戦争は村人たちを結束させ、互いに助け合い、薬や食料を分かち合うようになった。近くに戦闘があったため村にパンが届かなかったとき、隣人がヴェラに電話をかけてきて、何人かのキリスト教徒がパンを配っていることを教えてくれた。いつしか近隣の村は解放され、敵は去り、一応の暮らしが続いた。
長い間一人でいたヴェラは今までそんなことはしたことがなかったのに、神に語りかけるようになっていた。冬が来て、雪がヴェラの家の庭を覆った。ヴェラには雪かきをする気力も体力もなかった。そんなある日、ヴェラが外を見ると、ヴェラが頼んだわけでもないのに、ある女性がヴェラの家の庭の雪かきをしてくれた。その女性はヴェラのために食べ物が詰まった箱を持ってきてくれたのだ。
「あなたの名前は? お願いしたわけではないのに雪かきまでしてくれるなんて・・・」。ヴェラはその女性に尋ねた。「私の名前はリュドミラ、郵便局で働いています。私は神を愛し、その愛を必要としている人々を助けたいのです」と彼女は親切に答えた。
するとヴェラは泣き始めた。神は、ヴェラの全ての疑問に答えてくれる女性を遣わされたのだ。2人の女性は長い間話をした。リュドミラは食糧のみならず彼女に新約聖書を渡した。ヴェラにとって、これは大きな喜びだった。彼女は神について、イエス・キリストの生涯について読むことができたのだ。
リュドミラは彼女に祈りを教えた。ヴェラは罪の赦(ゆる)しを神に求めた。今、彼女はキリストの十字架の愛に答えを得た。ヴェラは神が近くにいて自分を助け、支えてくれることを喜んでいる。リュドミラは定期的にヴェラを訪ね、今では一緒に新約聖書を読んでいる。
戦禍の続くウクライナだが、助け合いを通して、主の僕たちによって力強く宣教も続いている。彼らの伝道が実を結び、キリストの福音の希望がなお明らかにされるように祈っていただきたい。
■ ウクライナの宗教人口
正教 61・2%
プロテスタント 5・8%
カトリック 10・1%
無神論 19・5%
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