牧師らが経営する社会貢献型ホテル「HOTEL ECCLESIA(ホテル・エクレシア)」が11月、京都市のJR二条駅近くにオープンした。宿泊代の10パーセントが、シングルマザー向けのシェアハウスの活動資金として寄付される仕組み。シェアハウスは来年4月からホテルの1階に併設する予定で、入居募集は来年1月から開始する。
ホテルを開業したのは、株式会社グレープヴァイン(京都市伏見区)。同社の社長である後宮嗣(うしろく・つぐ)氏(日本基督教団世光教会伝道師)は、牧師を志し、約10年間勤務した東証一部上場の商社を辞め、2020年に同志社大学大学院神学研究科に進学。教会の枠を超えて持続可能な社会に貢献したいと、大学院在籍中に先輩牧師である吉岡恵生(やすたか)氏(同高槻日吉台教会牧師)と起業し、昨年11月に同社を設立した。同社のプレスリリースによると、日本基督教団の牧師らがホテルを経営する事例は他にはなく、これが日本初だという。
一方、後宮氏らは初めからホテル事業を計画していたわけではなかったという。初めは、聖書の隣人愛に基づき、社会的孤立に陥りやすいシングルマザーとその子どもたちのために、共同生活ができるシェアハウスを設立しようと準備を進めていた。しかし、入居者のセキュリティーの確保という建屋面の課題や、活動資金を行政からの委託や支援者からの寄付に依存せざるを得ない制度面の課題に直面。これらの課題を解決する手段として、社会貢献型ホテルの開業を考えたという。
具体的には、宿泊代の10パーセントを、シェアハウスを運営する一般社団法人「みをつくし」(京都市中京区)に寄付。それを活動資金として、客室を住居に改装するための工事費や、入居家庭の生活費、母親の就労支援、子どもの学習支援、スポーツやキャンプなどの野外活動などの費用に充てるという。
同社によると、社会的課題を解決するための手段としてホテルを開業する事例も他にはなく、これが日本初だという。また、一つの建屋内に居住エリアとホテルエリアが共在する事例は他にもあるが、シングルマザー向けシェアハウスに限定した居住エリアとホテルエリアが共存する事例は他にはなく、その点でも日本初だという。
ホテルの名称にある「エクレシア」は、古代ギリシャ語で「人の集まり」「集会」「共同体」を意味する言葉で、「教会」の意味でも用いられる。ホテルのプロジェクトマネージャーである吉岡氏は、「ご宿泊いただく皆様には、当ホテルでの滞在を通して、大切な方々とかけがえのない憩いの時間をお過ごしいただき、共に集うことの喜びを再発見していただければと思っています」と話している。
また、後宮氏は、「皆様の旅行や観光という何気ないレジャーに伴う宿泊が、温かい支援の輪となり広がっていくことを夢見ております。この取り組みを通して、女性の活躍や、地域社会の持続可能性に貢献し、皆様とご一緒にSDGs(持続可能な開発目標)の一翼を担いたいと願っております」と話している。
客室数は全23室(定員115人)。ホテルのホームページによると、客室は、約28平米・定員4人の「和室」「スーペリアファミリールーム」と、約34平米・定員5人の「デラックスファミリールーム」「デラックスキッズルーム」の4タイプがある。また、12歳以下は宿泊代無料となっている。
■ 「HOTEL ECCLESIA(ホテル・エクレシア)」の情報
住所:〒604−8421 京都府京都市中京区西ノ京永本町23
アクセス:JR二条駅徒歩4分、地下鉄東西線二条駅徒歩4分
電話:075・406・5600
定休日:なし
客室:23室(定員115人)
ホームページ:https://htl-ecclesia.com