ドイツ国内のプロテスタント教会の連合体である「ドイツ福音主義教会」(EKD)は20日、トップのアネット・クーアシュス常議員会議長が同日、辞任したとホームページ(ドイツ語)で発表した。
クーアシュス氏を巡っては、元教会職員の男性による20年以上前の少年らに対する性的虐待容疑について隠蔽(いんぺい)した疑いを指摘する声が上がっていた。クーアシュス氏はこの日に発表した声明(ドイツ語)で、自身に向けられた疑惑については強く否定する一方、教会に対するこれ以上の損害を防ぐため辞任を決めたと話した。
性的虐待容疑が持たれている男性はかつて、ドイツ西部の都市ジーゲンを管轄するジーゲン・ウィトゲンシュタイン教会地区で働いていた。牧師の娘であるクーアシュス氏は1993年、同教会地区の牧師となり、2005から12年には同教会地区長も務めた。
一連の疑惑は、地元のジーゲナー・ツァイトゥング紙(ドイツ語)が今月半ばに報道。同紙によると、問題の男性は少なくとも8人から性的虐待を告発されており、ジーゲンの検察当局が捜査を行っている。一方、同紙は、クーアシュス氏は男性の子どもの一人については代母(受洗時の証人)にもなるなど、男性とその家族をよく知っており、証言者の話を基に、少なくとも1990年代には既に男性の性的虐待容疑を詳細に知っていた可能性があると報じた。
ドイツの公共国際放送「ドイチェベレ」(英語)によると、クーアシュス氏はこの日開いた記者会見で、「この件(隠蔽の疑惑)に関しては、私は安心しています」「あらゆる瞬間において、私は自分の知識と良心の限りを尽くして行動しました」と述べ、自身のこれまでの対応については問題ないとする認識を示した。
その一方で、自身に対する社会的信用が失われていることは認め、決断は簡単ではなかったとしつつも、今後も現在の立場にとどまれば、男性の性的虐待疑惑について引き続き対応しなければならない教会の助けにならないと判断し、辞任を決めたと話した。
また、自身が知っていたのは、男性の「同性愛と結婚における不貞行為」のみであったとし、性的虐待疑惑については今年になって初めて知ったと説明。「それまで私は、この人物による性的暴力行為については全く知りませんでした」と話した。
EKDは、ルター派、改革派、合同派の信仰告白を有するドイツ国内の20のプロテスタント教会の連合体で、約2千万人のプロテスタント信者を代表する。クーアシュス氏は、EKDの構成教会の一つであるウェストファーレン福音主義教会の議長も務めているが、併せて辞任した。
クーアシュス氏の辞任を受け、EKDの常議員会議長は、キルステン・フェールス常議員会副議長が務めることになる。フェールス氏は、EKDの構成教会の一つである北ドイツ福音ルター派教会のハンブルグ・リューベック教区の監督を務めている。