ドイツのカトリック教会の著名な指導者が、何世紀にもわたってカトリック教会の聖職者に義務付けられてきた独身制に反対し、聖職者の結婚を認めるべきとの考えを示した。
ミュンヘン・フライジング大司教でローマ教皇フランシスコの盟友でもあるラインハルト・マルクス枢機卿が最近、南ドイツ新聞に対し、性虐待と戦うための改革の一環として聖職者の結婚を支持すると述べた。
AP通信(英語)によると、マルクス枢機卿は「一部の司祭にとっては、結婚した方が良いのです。性的な理由だけでなく、その方が彼らの人生にとって良いし、孤独でなくなるからです」と述べ、独身制について議論を行うべきだと語った。
マルクス枢機卿は独身制に完全に反対しているわけではないと強調しながらも、「独身と既婚の司祭の可能性をつくることが皆のためになる」とし、「それ(独身)をすべての司祭の基本的な前提条件として捉えるべきか」と疑問を呈した。
ミュンヘン・フライジング大司教区をめぐっては1月、1945年から2019年までの70年余りの間に、教区関係者から性的虐待を受けた被害者が約500人に上るとする1千ページに及ぶ報告書が発表された。
この報告書が大きな注目を集めたのは、当時、本名のヨゼフ・ラッツィンガーで知られていた現在の名誉教皇ベネディクト16世が、1977年から1982年まで同大司教区で大司教を務めていたことも影響している。
カトリック系のCNA通信(英語)によると、複数の虐待疑惑のあった司祭を同大司教区に異動させることを話し合った会議に、名誉教皇自身が出席していたことが問題視された。名誉教皇は8日、バチカン(教皇庁)を通じて発表した書簡で、対応の誤りを認めた上で「心からの赦(ゆる)しを請う」としたが、自身の不正行為は否定した。
報告書について自身の見解を述べたドイツ南東部パッサウ教区のシュテファン・オスター司教は、会議の中心的な内容は、虐待疑惑のあった司祭を精神的な治療を受けさせるために同大司教区に受け入れるかをめぐるものだったなどと指摘。名誉教皇を擁護し、「私たちは皆、あまりにも多くのシステムの一部であり、当時のラッツィンガー大司教もそうでした。そして、このシステムの中で、あまりにも長い間、虐待の被害を受けた人々の具体的な運命に対する関心は確かにほとんどなく、彼らのストーリーに対する知識もほとんどありませんでした」と語った。
カトリック教会は中世以来、司祭の独身を義務付けているが、まれに免除される場合がある。例えば、聖公会の既婚聖職者がカトリック教会に転会する場合、婚姻関係を維持することができる。
また、2019年に開催された「アマゾン周辺地域のための特別シノドス(世界代表司教会議)」では、聖職者不足を受け、アマゾン地域などの遠隔地で高齢の既婚男性が司祭になることを認めることについても真剣な検討が行われた。しかし、特別シノドスを受け2020年2月に発表された使徒的勧告「愛するアマゾン」で教皇フランシスコは、この問題について直接触れることはしなかった。