ロシア政府は、ウクライナ侵攻に抗議する国民を黙らせるために、抑圧的で悪質な戦術を展開している。
何千人もの反戦活動家が、クレムリンによって検挙されているのだ。その中には、最近国外逃亡を余儀なくされた、ロシアで最も尊敬される有名な福音派指導者の一人であるユーリ・シプコ氏を含む、数多くのキリスト教徒も含まれている。
現在、シプコ氏は逃亡中の身である。「私はお尋ね者です。ロシア政府からは指名手配されているのです。ロシアに足を踏み入れた瞬間、私は逮捕されるでしょう」とシプコ氏は語った。
8月8日、ロシア連邦保安庁(FSB)の諜報員は、ウクライナにおけるロシア軍とその作戦の信用を失墜させた容疑で、モスクワにあるシプコ氏の自宅を家宅捜索した。ロシア国営テレビで放映された家宅捜索の映像では、防弾チョッキとヘルメットを着用し、重火器を持った少なくとも3人の捜査官がシプコ氏の自宅に入った様子が報じられた。その映像では、シプコ氏のアパートで見つかったとされる手紙、書籍、日記、仕事上の連絡先、その他の資料が撮影されていた。
「私が『ウクライナ人と戦うことは犯罪であり、ウクライナ人を殺すことは犯罪であり、ウクライナの都市を破壊することは犯罪である』と発言したことで、政府は私を犯罪者に仕立て上げ、起訴したのです」とシプコ氏は言う。ある通報者のおかげで家宅捜索の情報を事前に察知して、逮捕前に国外に逃れることができた。
「私は信仰者の良心に照らして、黙っていることができませんでした。彼ら(ウクライナの信者たち)もキリストにある私の兄弟姉妹なのです」。そう語るロシア・バプテスト派の著名な牧師であるシプコ氏は、この国で最も有名な福音同盟の幾つかを率いてきた。昨年2月のウクライナ侵攻初日からロシアの軍事行動に批判的な発言をしており、ウラジーミル・プーチン大統領に戦争を終わらせるよう公に求めてきた。
ロシア政府は昨年、反戦派を取り締まる新しい法律を導入したのだ。アムネスティ・インターナショナルによれば、2万1千人以上の人々が標的にされ、しばしば拘留されたり、「外国工作員」のレッテルを貼られ、投獄される事態も起きている。
反戦であれ肯定であれ、言論の自由は最大限確保され、保証されるべきだ。ロシアの全体主義的傾向は、ウクライナ侵攻後ますます強くなっており、その懸念を払拭できない。その矛先が、平和への願いをもって発言する真摯(しんし)なキリスト信者にも向けられていることに、痛みを覚えないわけにはいかない。
戦争が速やかに終結し、平和が訪れることを祈ろう。反戦を唱える同胞兄姉らが守られ、この地に福音と自由とが広がるように祈っていただきたい。
■ ロシアの宗教人口
正教 64・0%
プロテスタント 2・1%
カトリック 0・6%
イスラム 12・5%
◇